夏は食欲が落ちるせいか、たいていの家庭で料理を辛くするそうだ。レストランも同じく、辛くしてくれる。いつもでもぎりぎりの辛さなのに、限界を超えることも少なくない。
今日は3月にオープンしたレストランで中華料理「鳥の肉団子ガーリックソース」を食べた。真っ赤な料理が出てきたときに嫌な予感がしたが、それが的中した。今までの経験をはるかに上回る辛さ。立ち上がって口を開けたまま走り回りたくなるような欲求を抑えて、店員に「辛すぎるよ!」
よく見ると、ソースの中に1ミリぐらいに刻んだ青唐辛子がたくさん入っている。この青唐辛子、そのひとかけらをかじっただけでも水三杯は必要になるのに、5つや6つどころでなく入っているのだ。
店員は私がもだえている様子を見て申し訳なさそうに「取り替えますか? 問題はこれがチリソースだからなんですが。」と言う。チリじゃなくてガーリックソースだろ?と思いながら、もう口をつけてしまったものなので最後まで食べることにした。「いいよ、次回から唐辛子を抜いてくれ」
ご飯の上にかけられたソースから唐辛子を1つずつ取り除きながら食べる。ネギも入っているので分別が難しい。皮が薄いのがネギ、厚いのが唐辛子。30分ぐらいかかって、除いては食べ、食べては除きを繰り返し完食。大事を成し遂げたような達成感がある。最後に取り除いた唐辛子を数えると80かけらもあった。取り除いたところで十分辛く、水も結局7,8杯飲んだ。
食べている途中、高校の部活の一発芸大会でタバスコ1本分を一気飲みし、翌日から3日間学校を休んだ梅津君や、ヒンディー映画『ハム・ディル・デー・チュケ・サナム』で青唐辛子を何本もヤケ食いするサルマン・カーンとアイシュワリヤ・ラーイのことを思い出した。
昼は青唐辛子を揚げて塩をまぶしたものをかじりながらパンを食べる。そんな癖がついているから日本でも漬物の唐辛子をかじってしまう。インドで自信がつけたのは、日本ならばどんなに量が多くても、どんなに辛くてもたいていは食べきれるということだ。体によくないだろうとは思うけれども。