いよいよカシミール滞在の最終日。夜に娘が血便を出す。タヒル家はまた「冬のカシミールにはよくあることだから、心配しないで」と取り合わないが、心配なので医者にいってみると感染症の症状だという。新しい薬をもらった。血便は結局この1回だけだったが、娘のカシミール滞在は最初から最後までさんざんだった。妻も咳が止まらなくて喉が痛いというので、薬を処方してもらう。診察料と薬代を入れて300円もしないので、保険など無用である。
医者に行ったあと、ウィーン大学から頼まれていた写本調査の用件でカシミール大学へ。タイミング悪く元州首相が亡くなり、喪に服す期間ということで図書館長に会うことはできなかった。前回もストライキで休みになっていたが、さらに冠婚葬祭でいちいち休むのではいつ仕事しているのだろう。
幸い写本担当のおじさんは仕事に来ていた。今回は用意周到に教授の手紙を予め送っておいたのだが、おじさんによれば送り先が違うという。話は複雑だがカシミール大学の図書館は写本セクションだけ図書館に属しておらず、別の研究所が管理している。しかもその研究所は冬季、ジャンムに移っているというのだ。
結局目的は果たせず、モスクの前で写真を撮って帰ってきた。夜はタヒルさんの父方の叔母さんの家へご招待。またなみだ目になるほどたらふくご馳走になったが、警察の宿舎はタヒルさんの家とは比べ物にならないほど寒かった。娘は眠っていて起きずじまい。