療養(4)

カシミールを去る日は近づいてくるのに、外に出たいと思わない。娘が万全でないというのもあるが、とにかく寒いのだ。残念そうにしているタヒルさんにお願いして、夕方ちょっとドライブにでかけてもらった。霧に包まれたダル湖は灰色がかっており、幻想的な雰囲気をかもしだしている。相変わらず機関銃やライフルを持った武装警官が警備をしていたが、寒いのにご苦労なことである。
帰りにタヒルさんの母方の叔母さんの家に遊びに行く。我々が来るというので集まってきた親戚が20人。タヒルさんが「カルホーナホー」の主題歌を歌えというので披露した。娘は出されたりんごをほお張っている。そんな珍しい光景に集まった親戚は喜んでくれたようだ。つい最近、20代の娘をなくした叔母さんの笑顔を見たのは実に久しぶりだったという。
娘に与えられていたペットボトル入りの「沸騰させた水」を妻が飲んでみたところ、そのあまりのまずさに結局この水(または容器)が下痢の原因だったのではないかという話になった。カシミールの水自体はとても美味しいが、沸騰させる鍋や使い古しのペットボトルが悪そうだ。カシミールの水には自信をもっていたタヒルさんをよそにドリンクウォーターを買うことにした。

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