引越し先がなかなか見つからないまま、20キロ離れたバリラーム先生のお宅まで自力で通わなければならない日々が始まった。
リキシャーなら単純に計算して片道250円だが、自分の基地に帰ってこなければならないため、そんな遠くまで行ってくれることはまずない。途中で乗り換えるか、往復の契約を結んで待ち時間分を余計に払うかである。日本でなら移動にそれぐらいかかるのは普通だが、インドでは破格に高い。
そこで今日は大学から、リキシャーを使わないで行ってみようと決心。約束の2時間近く前に出発した。
まず校舎から大学の門まで2キロほど。ここを学内循環電動リキシャー「ヴィクラム号」が走っている。いくら乗っても1回5円。歩けば20分かかるが、ヴィクラム号なら3分ほどで着いてしまう。
次に大学の門の前のバス停からコーポレーションというバスターミナルまで20分ほどで9円。や、安い。でも間違ったバスに乗ったりしたらたいへん。行き先はバスの額にデーヴァナーガリー文字で書いてあるが、すばやく通過するのであまり読めない。その辺のおっちゃんを捕まえてどのバスに乗ればいいか聞く。乗ってからも、地理が不案内なところでは降りたいバス停を車掌に告げて合図をしてもらう。
インドのバスの仕組みは、後ろ乗り前降りの料金先払い。車掌が集金に来るので行き先を告げて運賃を払う。車掌は誰からいくら集金しているか一応覚えているが、ごまかそうという人はあまりいないようだ。
バスは扉がない。バス停では、乗客が乗り終わる前に出発するので、最後のほうの人は扉のわきにある手すりに捕まりながら乗り込む。降りるときもバスが止まる前に飛び降りる人が多い。そのため乗り降りは緊張ものだ。ブザーなどはなく、降りたいときは扉まで行って車掌か運転手に直接言う。停車するバス停の放送などは当然のようになく、ときどきインド映画音楽を大音量で流している。動いているのが信じられないような年代もののバスが多い。隙間から、中の動力部が見える。
さて、コーポレーションから乗り換え、アーナンダパーク行きで40分、20円。でもこのバスは30分に1本なので、やたら待たなければいけないこともある。今日は出発したばかりだったので、途中まで同じルートのバスに乗った。バス停から15分歩く。
というわけで大学から約1時間30分、34円で到着。バスはインド庶民の足であり、どの時間でも混んでいる。今日は全く座れず、すごい揺れの中で手すりに捕まって踏ん張っていた。たとえ座れたとしても、本を読むことはおろか、眠ることすらできそうにない。それでもインド人の中には本を読んでいる人、熟睡している人も見かけた。
往復3時間かけて、授業は1時間だけだが、バリラーム先生の授業は3時間かけて来た甲斐があると思える授業で楽しい。わからなければ次々と喩えを変えて説明してくれるし、サンスクリット語も流暢。欠点を挙げるならば、部屋の中に蚊がいてやたら刺されることぐらい。でもこのごろ体質が変わったのか、小さい蚊ならば30分ほどで腫れと痒みが引くようになった。なぜだろう?