こちらでは毎日日曜日のような生活をしているが、本当の日曜日となると家族みんなが休みで家におり、親戚も遊びに来るので何となく賑やかだ。午後から家族みんなで出かけようという話になったが、目的地チャシュマ・シャイで全員が揃ったのは午後7時だった。
その前に我々は出発して2箇所を見て回り、チャシュマ・シャイに着くとタヒルさんがシク教のターバンを巻いた一団と口論を始めた。訳を聞くと、チャシュマ・シャイに来る前に寄ったパリ・マハルの駐車場で当て逃げされたらしい。確かに車の横が少しへこんでいた。タヒルさんは車のナンバーを覚えていて、その車をチャシュマ・シャイで捕まえたのである。
あちらは7,8人いる集団に、タヒルさんとジミーさんが敢然と立ち向かう。始めはつかみかからんばかりの剣幕だったが、だんだん穏やかになり、最後は握手をしながら口論していた。
「車にぶつけるのは仕方ない。でも黙って逃げるのは悪いことだ。だから彼らには、何も要求しないからぶつけたことだけ認めろと言ったんだ。でも彼らはなかなか認めない。認めたら多額の修理代を請求されると思ったんだろう。」
そこにタヒルさんの叔母さん登場。日曜日で公務は休みだが、ボディーガードは2人、私服を着てしっかり付き添っている。叔母さんの家族も警察の車に乗って一緒にやってきた。機関銃を持ったボディーガードの1人が、その口論に入る。これで相手はもう観念したらしく、ぶつけたことを認めて和解となった。タヒルさんは修理代も何も一切要求していない。
日本だったら警察を呼んで保険を使うにせよ、示談で済ますにせよ、修理代(だけ)が問題となる。しかしここでは、行いの善悪が問題でお金は二の次、三の次だった。悪いことをすれば、神に罰せられる。でも懺悔すれば赦されるだろう。日本人がいつしか忘れてしまった大事なことを、この事件を通して感じ取った。
今日の観光スポット
シャンカラ寺院
ダル湖に近いスライマン山の頂上にある寺院。歴史は古く、紀元前2世紀、ジャルーカ王(アショーカ王の子)の時代まで遡るらしい。当初は仏教寺院だったが、現在は入り口にシャンカラ、中央にシヴァが祀られている。ハウスボートが何百も並ぶ風景を一望できる。しかしこの絶景が災いして、携帯電話やデジタルカメラなどの電子機器は治安上持ち込めない。
イスラム教徒が6割以上を占めるシュリナガルだが、この寺院をはじめとしてパールヴァティー、ハヌマーンの寺院もある。
パリ・マハル
シャンカラ寺院とは別の山の中腹にある庭園。かつては仏教寺院だったらしいが長く忘れ去られ、後にシャー・ジャハン帝の息子ダラ・シャコーがスーフィズム研究所に作り変えた。そよ風に吹かれながら、ダル湖の美しい風景を楽しむことができる。
チャシュマ・シャイ
シャー・ジャハン帝が作ったムガル庭園。湧水があり、山の奥底から湧き出た冷たい水は健康によいということで大勢の人が水をくみに来ている。故インディラ・ガンジー首相もここの水を毎日空輸でデリーに取り寄せていたという。
近くに要人の住居があるため警察でもらう入場許可証を必要だったが、このたび解禁されて誰でも入ることができるようになった。入場料5ルピー。