ヨーガ(2)

心理学教室 ヨーガのクラスは,毎日同じことをするのかと思っていたが日によってメニューが変わる.あやしいものも少々.
 「シャワ・アーサナ(死体のポーズ)」は大の字に寝転がって目を閉じ,リラックスする.先生が「かーんぜんににリラーックスしてー(coompleetelyyy
relaaaax)」と眠くなるような号令をかける.両足の小指から親指,両手の小指から親指へと意識をひとつひとつ集中しては変えていき,最後に,体のどこにも意識がいかないようにする.つまり死体になるということ.
 「スーリヤ・ナマスカール(太陽にあいさつ)」は「オーム,スーリヤーヤ,ナマハ」と合掌で唱えてから体を起こしたり倒したりして,その度に天を仰ぐ.一連の動作が終わると,「オーム,バースカラーヤ,ナマハ」と太陽を別名で呼びながら同じことの繰り返し.太陽にはそのほかにもラヴィ,サハスラカラなどの別名があり,5,6回繰り返しただろうか.寝たり起きたりなので,結構つらい.
 かなり苦しいポーズをとっているときに先生が「このポーズは特に腰の悪い人に効果的です」などといった解説を入れてくれる.「いや,腰の悪い人はこんなポーズはできません」と心の中でつっこむ.
 さて,夕方のヨーガのクラスには韓国人3人とインド人1人が参加しており,私を入れて5人でやっている.韓国人はインドにヨーガと英語を習いにきたという.一人は日本に1ヶ月住んでいたことがあり,「高田馬場の国際パチンコで遊んでいました」なんていう話も.英語は「difficult」を「ティピカルト」と読む韓国英語だ(コーヒーは「コピ」,コピーは「カピ」).
 インド人はヨーゲーシュという教育心理学の学生.ヨーガ+イーシュ(ヨーガ・マスター)という名前はまさにヨーガにもってこい.マハーラシュトラ州の北はずれジャルゴーンの出身で,大学の近くに同郷の人と5人で住んでいる.その彼は,週に一回昼食をぬく軽い断食をしている.彼のお母さんは週に2回,ガンジーは毎日のように行っていたという.「ヨーガと断食が神様に会える方法なんだ」という彼の目は,とても輝いていた.
 そのヨーゲーシュが教育心理学の調査をするというので協力することになる.「すなお」「けんか好き」「貪欲」「気まぐれ」「頑固」「わがまま」などの設問について,自分はどれぐらい当てはまるか,他の人は自分をどれぐらいであると見ているか,そして自分の理想はどれぐらいかというものを答える.英語で書いてあり,わからない単語は説明してもらえる.ところがヨーゲーシュは,分かる単語にも説明をしてくれる上に,「これは反社会的な性質だよ.君には当てはまらない.僕が保証する」などと付け加えて先生に「誘導はしないように」と注意されていた.
 「時間を守る」というのは,日本とインドのお国柄の違いがはっきりする.日本で私はわりと時間にルーズな方だと思うが,インドに来ると超几帳面な人間になってしまう.小島さんの話では,ビジネスにおいても同じらしい.時間を決めてアポイントをとっても現れず,忘れた頃にひょっこりやってくるなんていうことがよくあるという.確かに交通渋滞が頻繁に起こるため約束を守りにくいのは分かるが,それならそうと早めに移動を開始するとか,遅れるという連絡を取るとかという発想をしないのが,インド流だ.日本にいる私のお師匠さんは,1分遅れる場合でも携帯から連絡することにしているというのを思い出した.
 調査協力のあと,ヨーゲーシュにジャヤカル・ライブラリーという大学図書館に連れて行ってもらう.学習室は夜中遅くまで開いているらしく,あまり明るくない蛍光灯の下で学生が熱心に勉強していた.しかも中央には創立者か何かの大きい額縁が掲げられてあり,その下でたくさんの学生が熱心に勉強する姿は北朝鮮を連想させるものがある.ここの図書館は利用証が有料.本はたくさんあったが専門書となるといつも勉強している図書室にはかなわない.一度だけ見学させてもらうことにして,後しばらくは行くことがないだろう.
 そのようなわけで,ヨーガクラスを通して少しずつ学内に知り合いが増えてきた.道端で声をかけられることもある.孤独になりがちな留学生としては,なかなかいい環境なのではないだろうか(写真は心理学科,教育心理学科は別だが,7年間学科が閉鎖されていて今年から再開したので看板などはまだない).

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