大学へは自転車(写真右)で行く.引っ越した当初はリキシャーで通っていたがあまりに近いので運転手がよく乗車拒否をする.特に皆が帰る夕方なんかに「アウンド(今住んでいるところ)へ」と言うと,おっちゃんは怖い顔で首を振る.すぐ前のおっちゃんもそのやりとりを聞いていてこちらが行き先を告げる前に首を振る始末.こうして軒並み乗車拒否されて,仕方なく歩いて帰ったこともある.歩いて帰る場合は20分くらいだが,最初は道がわからなかったので遠回りして30分以上かかっていた.
学生の多くはバイクかスクーターで通学している.日本ならスクーターくらいの値段ででかいバイクが買え,スクーターなら新車でも5,6万円といったところなのだが,まず道路が怖い.道路がカオスのこちらでは事故は日常茶飯事なのに,ヘルメットをかぶっている人はほとんどいない.保険もまず入っていない.ぶつかったり,ぶつかりそうになったらその場で言いたいだけ言い合って,気が済んだら終わり.轢き逃げ,当て逃げ上等.はねられたらはねられた方が悪い.邪魔だと思ったらすぐクラクション.その上スクーター1台に2人乗り,3人乗り,4人乗り….こんな道路では,とてもとてもバイクなど運転する気になれない.道路の隅っこをのんびり走るのが吉と,自転車を買うことにした.
ところが今住んでいる近くに自転車屋がなかなか見つからない.この街はバイクが標準なのだ.結局大学の正門の近くにあるバイク屋さんで,奥の方に投げ捨てられたように置いてあった中古自転車を800ルピー(2000円)で購入.不動産屋のドゥルゲーシュに「何でそんな大金をこんな自転車に!」とまた怒られた.
調整してもらって乗り始めたが,乗って5分で異常発生.後輪がガタンガタンいうのだ.パンクしてないのにどうしてかと思ったら,タイヤの中につぎはぎのゴムが入っていた….結局タイヤを交換してもらう.ところがそのタイヤがまた3日後に崩壊.後輪が回らなくなってしまった.リキシャーに自転車を乗せてバイク屋に向かい,80ルピーでまた交換してもらう.それ以降は特に油をさしてもらってからすこぶる順調だが,筋が完全に消えている前輪のタイヤも非常に怪しい.
しかし自転車のお陰で大学まで10分.映画館にも,バンダルカル東洋研究所にも自力・無料で行けるのが嬉しい.運動にもなるし,事実乗って1,2週間で足に筋肉が付いた気がする(それだけ重い自転車だということ).今住んでいるところから大学までは緑も多くて空気もきれいだが,市街地に行くほどリキシャーやバスが撒き散らす真っ黒い排気ガスを思いっきり吸う羽目になるのが難.それとチェーンがズボンをときどき噛んでズボンの裾が油で黒くなるのもイヤだ.
アパートでは盗まれないように壁にチェーンでくくりつけているが,どうやらこれだけボロイ自転車だと,あまり盗まれることはないらしい.一体いつ作られて,何人の人が乗ってきたのだろう.あまりの年季の入り方に,畏れ多い気すらしてしまう.はじめは「安物買いの銭失い」と後悔し続けていたが,今ではとても愛着をもっている.