授業も大部分が終わり,大半の時間は図書室で本を読む生活.コピー機がないので,気になった箇所はせっせとノートに写す.手は疲れるけれどもコピーを取っただけでよくよく読まずに安心してしまうのと違って,考えながら写すのでよく頭に入るものだ.読むべき本はどんどん増えていき,きりがない状況.人の話を聞くのと違って気づかれはしないが,目はとても疲れる.その分,終わってからの「今日もよく勉強したなあ!」という達成感は精神衛生上なかなかよろしい.
キャンパスに所狭しと並んだビルが大学のイメージだったが,ここに来て覆された.正門から中央まで1キロ近くあり,その間はほとんど森の道になっている.その中にところどころポツン,ポツンと建物があり,サンスクリット語と英語で学部名が書かれた看板が木の陰に隠れているような感じだ.キャンパスを一歩外に出ると排気ガスとクラクションだらけの道路に沿って建物がずっと続いているので,これだけ大きな森が取り残されているのは珍しい.話によると,この森のお陰で夏場は市街地と比べて数度温度が下がるという.
ほとんどが森だけに大学の中は自然がいっぱい.最初に驚いたのが牛.道路をのんびりと集団で歩けば,バスもリキシャーもよけて通るしかない.私が把握する限り,牛は4匹いる.茶色い牛(写真)がなかなかりりしくて好きだ.キャンパスの中心を歩き回っては生ごみと草を交互に食べる.暑いときは自転車が止まっている中で昼寝.母牛が子牛をなめていることもある.見ていて飽きないが,何しろ大きいので危なくてあまり近づけない.いきなり走り出すこともあるのだ.
インドでは神様の乗り物として聖獣とされており,牛乳を搾るのと牛車を引かせるけれども決して食べたりしない.私が丑年生まれということもあって,心なしか親近感を覚えてしまうが,あちらは人がいようといまいとおかまいなしにのんびりしている.
次に驚いたのがイノシシ.自転車で走っていると急に茂みからガサッと音がしたと思うとすごい速さで前を横切っていった.しかもこれまた3,4匹集団で移動している.けっこう図体がでかいので自転車に横から衝突されたら怪我することは避けられまい.野良犬もいる.インドに来る前狂犬病の予防接種をしてきたものの,狂犬病の犬に噛まれたら死亡率100パーセントというのを聞いて犬を意図的に避けている.もっともこちらの野良犬もあまり人に近づいては来ない.
今は正門からではなく,西門から入る.こちらはさらに建物が少なく,森林浴しているような気持ちよさだ.森はうっそうと茂っているが,地面に草は不思議と生えていない.そこで近所に住む人が薪などの燃料を集めているからかもしれない.人間が通るのかイノシシが通るのかわからない獣道.ふらふらっと森の中に入ってみたくなる.ただしこういうところは街頭もないので,暗くなる前に脱出しなければならない.
この前校舎の前で人を待っていたら,足がチカチカ痛いので焦って見ると,サンダルからアリが這い登って私の足を噛んでいるところだった.かなり小さいアリだが何匹もいて痛さは強烈.しかも小さいためなかなか払い落とせない.片足を上げてケンケンしている姿を,通りがかりの人が不思議そうに見ていた.
生命力の強さを思い知る.私も負けていられない.