17歳の犯罪が取り沙汰されてずいぶん経つが,朝日新聞で同年代による投書が掲載されていた.
その中で戦慄を覚えたのが,
「厳罰を与えるべきだ.更正させる必要なんてない.税金の無駄だ」
という意見.世の中ここまで来たものかと思うことしきりであった.
ここには,犯罪者に対する明らかな差別がある.この差別は正当なものなのだろうか?
確かに被害者の関係者の心情から見れば犯罪者が普通の人間と変わりない生活を送ることができるのは許せないだろう.犯罪を重ねて新たな被害者を生み出す恐れもある.
更正させる必要がなく税金が無駄だと言うなら,死刑しかない.
しかしここには問題がある.まず,人間は悪いことをした人・していない人という厳格な区分があるように映ることである.これは正しくない.悪いことをしていない人などこの世にはいないはずである.単に法に触れておらず,自覚もないから悪いことをしたことのない人に区分されるように見えるだけだ.自分の行いを反省しないで他人の過ちを責めるのはどうしたものだろう.
次に,普通の人以外は差別されてもよいという考え方を助長する恐れがある.以前にこれと同じ非人道的な表現を障害者差別で見たことがある.
「遺伝子検査で障害があるとわかっているのに産んだ子供を社会が面倒を見る必要はない.税金の無駄だ」
また同じことが公共広告機構の「ジコ虫」にも表れている.モラルのないことは確かに問題だが,そのことで人間であることを否定してしまっていいのだろうか.本当に虫扱いしてよいのならば,即刻殺してもよいことになる.
「人間の姿をした虫が・・・」
「個性の重視」という教育や,責任なき個人主義の取りこみの結果,日本はこれからもどんどん差別する社会になっていくのだろうか.正義をふりかざすこの投書を読んで,その思いを強めたのであった.