「我利我利亡者ぼったくり坊主」がテキトウにつけた戒名よりは、自分自身や家族でふさわしい漢字を使って自作しませんか?という本。資料として戒名の歴史と戦国武将や殿様たちの戒名つき。
殿様の戒名は感心するほどたくさん調べられており、確かに戒名カタログにはなっているが、広く浅くの雑学本といったところ。後半は対談形式になっているが、戒名談義というよりも戦国歴史オタク談義といった体。むしろ歴史に興味のある人向けかもしれない。信長の戒名がどうして2つあるのかなどは面白い。
戒名や位階を金で買うといういわゆる戒名料問題が現代日本仏教の大きな問題であることは否めないが、あえて言わせていただくと僧侶だけの責任ではなく、宗教的な領域に見栄などの世俗をもちこむ一般人の招いたことでもある。
『以心伝心で、お礼の金が動いたのは確かでしょうが、今みたいに、お寺の坊主のほうから、「居士はいくら、大居士ならいくら、院殿がくっついたらこのくらい」なんて、さも定価表でもあるように要求する露骨なリンク制度が始まったのは、そんなに古いことじゃないんじゃないでしょうか。』という記述があるが、たとえ以心伝心であっても見返りのお金ならば布施ではない。
戒名料については誤解を生むものだとして仏教界では廃止ということになっている(名目を変えたりして要求しているところもまだあるが)。また地方では寺院と檀家との日常的な交流の延長線上でその人に相応しい戒名をつける努力がなされている。そういった点をうやむやにして「我利我利亡者の坊主」「ぼったくり仏教」を連呼されると、じゃあお前さんたちはどれほど正しい信仰に生きる仏教徒なのかと問いかけたくなってしまった。