『ハラスメントの境界線-セクハラ・パワハラに戸惑う男たち』


白河桃子著。飲み会の席で「きれいどころ」とか「女の幸せって」とかいう人たちを不快に思いつつ、人権擁護委員の研修で「当事者が不快だったらセクハラ・パワハラ」という説明が腑に落ちなかったが、この本でだいぶすっきりした。女性記者へのセクハラで辞任した財務官僚事件で明るみになったように、セクハラとパワハラはリンクしており、多様性のない「男性だけの同質性」と、立場の弱い人がイヤといえない構造が背景にある。

タイトルにあるような境界線ははっきりしておらず、企業・団体によって一応の基準を設け、ケースバイケースで判断しているというのが現実のようだ。例えばアメリカで開発された「職場におけるセクシャル・ミスコンダクトのスペクトラム」(p.194)では6段階に分けるだけでなく、状況・これまでの関係・口調・非言語的な行動によって判断するとされている。

①概して侮辱的ではない(ヘアスタイルや服装などについての日常的な発言)
②気まずくさせる/軽度に侮辱的(女性に不利なジェンダーの違いに言及・暗示)
③侮辱的(ジェンダーの違いに鈍感・傲慢な態度)
④極めて侮辱的(意図的に侮辱する発言・行動)
⑤明らかなセクシャル・ミスコンダクト(下品な行動、身体に実際に触る行動)
⑥重大なセクシャル・ミスコンダクト(無理強い・性的虐待・暴行を伴う行動)

とはいえ、軽度なものでもエスカレートしていく恐れはあり、根本的には性別役割分担の固定観念や、女性視点の無視・軽視など無意識のジェンダーバイアスを組織単位で「アンラーニング」する必要があると説く。私が不快に思う飲み会での発言も、そういった意識が垣間見えるからだろう。そういう自分も無意識のジェンダーバイアスがないか、たえず点検していこうと思う。

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