友原章典著。経済学者がさまざまな論文から導きだされた幸福をデータとして示す。卒業アルバムの女性、メジャーリーグの選手名鑑に載っている選手でデュシェンヌ・スマイル(口だけでなく目元も笑っている)をしているかどうかで追跡調査をしたところ、笑顔だった人のほうが結婚生活に満足しており、長生きをしていたという。作り笑顔でも脳をだましてストレス反応を緩和できる。そんな気のせいではない話が実証的に紹介されており、いろいろなところで話したくなる。ほかにも……
- 修道女の自伝を調査したところ、ポジティブな感情を多く書いている人ほど長生きした
- 1回ネガティブな発言をしてもポジティブな発言を5回以上している夫婦は長続きする
- 楽観的な人のほうが免疫系が強く、ストレスに強い
- 親が子どもと時間を共有して怖がらせる行為を慎むように指導されたグループは、ストレスに強い
- マインドフルネス認知療法(呼吸を意識する瞑想を繰り返し行う)は、抗うつ薬治療と同程度の効果がある
- アクセプタス&コミットメントセラピー(自分の感情を受け入れ、今この瞬間とつながり、自分なりの価値観に基づいて行動する)は信仰がなくても実践できる
- 幸福は伝播する。知り合いが幸せならば自分も幸せな確率は15.3%、知り合いの知り合いが幸せならば9.8%、知り合いの知り合いの知り合いが幸せならば5.6%上がる
- 20代では交流の量、30代では交流の質が、成人後期の生き方に影響を与える
- 社会支援に性差。彼女に助けてもらった男性はストレスが下がるが、彼氏に助けてもらった女性はストレスが上がる
- 日本では女性の社会進出が遅れているのに、男性より女性の方が幸せと感じている。社会進出が進むほど男性と比べられるからか
- 生活満足度が高い人のほうが結婚しており(幸せ→結婚)、結婚は加齢などによる幸福感の低下を緩和する(結婚→幸せ)
- 孤独な人ほど早く亡くなる傾向。社会的孤立により29%、一人暮らしで32%、孤独感で26%死亡率が上がる
- 宗教による幸せは、教義や儀式によるものではなく、同じ価値観を共有できる人との交流が幸せの源である
- 宗教が盛んな国ほど信仰心は自尊心を高める。信心深い人が評価されるため。環境が劣悪な国ほど、信心深い人が幸せ。社会支援や生きる意味を受けて生活環境が改善するため(逆に言えば、生活が豊かになることで信仰が幸せに結びつきにくくなる。教会離れ・寺離れ)
- 宗教が心の健康に良い理由は、ストレスに対処する力を与え、社会性のある行動や規則正しい生活を推奨するから
- 自制心が強い人は、めったに自制心を使わない。よい習慣を組み入れて、自制心を使うような機会を回避している
- 他人と長く話していると幸せに感じるが、世間話のような雑談よりも、実質的な会話をしている人はより幸福感が高い
- グループで昔のことを話すと幸福感が改善する。
回想法は認知機能や気分改善の効果もある お寺の法話の会でいくつか紹介し、回想法を実際やってもらった。小グループで、昔助けられた話や嬉しかった話を、情景を思い浮かべながら感情豊かに話してもらったところ、楽しそうに盛り上がって頂いた。