ネパール人の人質12人がイラクで殺害 (Indian Express 9/1) イラク武装グループは12人のネパール人人質を殺害したと発表、首を切られている写真と銃殺された写真を公開した。 「仏陀を神と崇めながら、イスラム教徒と戦いユダヤ教やキリスト教に仕えるためにやってきた12人のネパール人に神の判決を執行した。」と武装グループのスポークスマンは述べている。 (写真:両手を前に出してうつ伏せになっている12人の死体) |
インド怪人紀行 ゲッツ板谷/角川文庫
インドに住み始めてから紀行文を読むのが面白くなった。インドに携わっているにもかかわらず、留学前はどの都市がどこにあるかも分からない状態だったのが、こちらにきてそれぞれの都市の気候や雰囲気を見聞するようになると、紀行文を「なるほど、なるほど」と読めるようになる。
その中で異色の紀行文がこれ。何の前知識もなしにインドを40日間さまよい、病気と麻薬だらけのダメダメな日々を綴ったものだ。デリー、ムンバイ、ゴア、ヴァラナシ、コルカタという主要都市を全て回っているが、遺跡や建物の話などほとんど出てこない。そんなものはどうでもよいと言わんばかりに、寄せ集めメンバー4人の人間模様が事細かに描かれている。常に誰か1人は体調を崩しているし、何日も麻薬に明け暮れているので観光どころではない。
最後にマニプール州インパールという、外国人がなかなか立ち入れないところに挑むが、許可がなかなか下りない上に、苦心の末着いたところでまたダメダメなガイドに捕まって何もできない。予定通りに行かないのがインド旅行の醍醐味だろうが、ここまで来るともう喜劇の域だ。
それにしてもインドはつくづく麻薬大国なのだと思う。著者の回ったところが特にそうなのだが、麻薬目的で来ている日本人ばかりが登場する。特にヒンドゥー教の聖地ヴァラナシには、そういう日本人がごまんと集まっているようだ。中には麻薬中毒で一文無しになる者も。麻薬が手に入るところやその種類と効用、あとHIV感染者だらけの売春宿の場所といったアングラ情報まで載せているガイドブックは、この本を措いてほかにない。
「インドに行った者は、徹底的にハマるか、二度と行きたくなくなるか、そのどちらかだ」
誰が言い出したのか知らないが、いたるところでよく聞く格言だ。しかし著者はインドを大っ嫌いになりながらも、あと何年か経ったらもう一度行きたいような気がしている。自分の人生観を揺さぶるほど気に入った面もあれば、どう考えても理解できない嫌な面もあるというのが、多くの人の本音ではないだろうか。
前に話していたインド人がこう言っていた。
「インドに来た日本人がよく『インドは最悪だった』というけれど、誰も来てくれなんて頼んでない。あなたが勝手に来たんだろう? 私だって日本にいて嫌なことがたくさんあった。でもそれは習慣が違うというだけのことで、数え上げたらきりがない。それよりももっとポジティブにものを捉えられないのだろうか。」
著者は後書きで、今の日本人がなかなか体験できない「負ける」という感覚が、インドで嫌というほど体験できるのは快感になるという。暑さ、砂ボコリ、細菌、不便さ、汚さ、悪臭、インド人のしたたかさ、しつこさ、図々しさ。しかしこの負けを認めることで、「己の人間力」を高める第一歩が始まると説く。負と正は表裏一体、紙一重。不自由さを感じるに事欠かない今の生活で、このことは私も感じつつあることだった。