著・池谷裕二、講談社ブルーバックス
正しくないのに、進化の過程か本能かで間違って行動してしまう「認知バイアス」のバリエーションをクイズ形式も入れて辞書的に列挙する。よくある行動パターンに名前がついているのが気持ちよく、今の生活で思い当たることが多い(バーナム効果?)。
社会的地位の高い人ほどモラルにかける行動を取るという「上流階級バイアス」は、人よりも上にいるという思い上がりが原因。無能な人ほど自己を高く評価する傾向がある「ダニング=クルーガー効果」と併せて考えると、謙虚であることは難しいが大切だと分かる。
晋山結制のテーマでこの頃よく考えている因果は、失敗も成功も自ら招いたものだと思う「公正世界仮説」、1回のイベントで因果関係を創作する「錯誤相関」、一度下した決断が自分の次の行動を縛り考えなしに習慣化してゆく「自己ハーディング」、逆も真と考えてしまう「カテゴリー錯誤」、脳が先に決めているのに自分には自由があると感じる「自由意志錯覚」などで見ると明らかになるところがある。こういった錯覚だらけの生活からどうやって脱却し、新しい自分に生まれ変わっていくかは仏教の大きな課題なのかもしれない。
新型コロナウィルス騒動では、現実には無視できる低い危険率でも最悪のケースを想定して過剰に反応する「最悪場面想定バイアス」、落ち込んでいるときには、さらに嫌なことが重なりそうに感じる「悲観主義バイアス」、非常事態への対応を避けたがる「正常性バイアス」、10のリスクを1に減らすよりも1のリスクを0にすることに躍起になる「ゼロリスクバイアス」などがはたらいていると考えられる。
家庭教育面では命令されると反発したくなる「リアクタンス」、他人から指示されなくても湧き上がる「内発的動機づけ」、やればできるということが今やらなくてもよいになってしまう「ステレオタイプ脅威」、終わっていない仕事の内容は終わった仕事よりも思い出しやすい「ツァイガルニク効果」などが参考になる。
あとボードゲーム的には……こんなふうに、自分の関わっている問題意識とリンクさせて集めてくると楽しい。