『ヒトは「いじめ」をやめられない』『シャーデンフロイデ』『キレる!』

著・中野信子(脳科学者)。ショッキングなタイトルが並ぶが、集団が協調・団結して正義が暴走することで起こる「利他的懲罰」の危険性を、脳内ホルモンから説明している。

『ヒトは「いじめ」をやめられない』:「学校では、ものの善悪、知識を杓子定規に決めつけて教えるのではなく、善の中にある悪、悪の中にある善を教え、人間の多様なあり方を学習する場として学校が機能すれば、”自分の正義”によるいじめの意識を変えれるのではないか」というのを読んで、小学校での人権教室で「いじめは絶対ダメ!」と教えることへの違和感が分かったような気がした。団結や愛情や仲間を大切にすることにもマイナスの側面があるということを考えなければならない。

『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』:シャーデンフロイデというのは「他人の不幸は蜜の味」「メシウマ(他人の不幸で今日も飯がうまい)」のことで、その正体は利他的懲罰による線条体の活動。「悪い人を排除すればよいという考え方がディストピアだとわかっている人たちが、すでに、その子供の考えを排除し始めている。悪い人を叩く悪い人をまた叩くというスパイラルが生じている」というのは、悪いと思われる人への対処法に示唆を与えてくれる。人の悪口を言う人の悪口を言ったのでは同じ穴のムジナだ。

『キレる! 脳科学から見た「メカニズム」「対処法」「活用術」』:怒りの原因を脳内ホルモンで説明すると、ストレスに反応し神経を興奮させる”闘うホルモン”ノルアドレナリン、意思で感情をコントロールして衝撃的な行動を抑える前頭前野の機能低下、脳内に快楽をもたらし理性を働かなくさせるドーパミン、攻撃性や支配欲を高める男性ホルモン・テストステロン、愛着が強すぎるあまり憎しみや妬みの感情も強めるオキシトシン、安心ホルモン・セロトニンの不足だという。対処法として「戦略的にキレるというスキル」=気持ちでキレても言葉ではキレない、面倒な人だと思わせる、ユーモアで本質を伝える、フォローの一言を入れる、相手との間に線引きをする(「私にも非がありますが、それ以上の攻撃は困ります」)、持ち上げてから人格を責めず行動を責める(「あれはないよね~」)、ニコニコしながら主張を通す(アサーション)、日本語の運用力を身に付けるなどが提案されている。言葉こそが、進化の過程で人間につきまとってきたネガティブな本能から人間を解放する鍵になるのだろう。

男性脳・女性脳的な記述については推測の域を出ていないと思うが、原因を脳科学で説明することで、感情の場合分けとその対処方法が模索しやすくなると思った。

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