『寺院消滅』の著者による現代日本の霊魂観を、寺院や僧侶の視点も交えて描き出す。
強化ガラスで保存された平将門の首塚、孤独死現場の清掃をしている人たちが感じる誰かからの視線、東日本大震災から1年半後によく現れた幽霊、遺体を埋めるお墓とお参りするお墓の両墓制がある地域、青森のイタコ、沖縄のユタ、アイヌのトゥスクルなど現代のシャーマンをルポルタージュし、柳田國男の研究や三島由紀夫の霊魂観を紹介し、現代宗教法人と僧侶に霊魂について行ったアンケートを分析する。
一般に僧侶が積極的に霊魂について語らないのは、釈尊の唱える「無記」(今の苦しみをどうやって取り除くかが大事であってあの世のことなど考える暇はない)、オウム真理教事件以降のオカルトの忌避(見たこともないことを見てきたように語るのは怪しい)、宗教的恫喝の回避(先祖を祀らないと祟るといって不安を煽らない)などがある一方、葬儀や法事に鎮魂という意味があることは否めない。そのニーズを全く無視して仏教を説いても、「葬送の担い手が仏教僧侶でなくてもよいという考え方になって(浄土宗・畦昌彦)」しまうだろう。直接的にはできなくても、家族を亡くした人には霊魂についての思いがあることを常に意識して、その思いに寄り添い、間接的・結果的に鎮魂になるような供養を心がけていきたい。
イタコの口寄せの「型」が(239ページ)、仏式の供養でも参考になりそう。
①神仏を招くための経文や祭文をよむ。
②死者の魂を憑依させる。
③降りてきた死者は、生者に対し「口寄せしてくれた礼」を言う。
④現在の心境を語り出す。
⑤別れた時は辛かったが、今は「あの世」で元気にしていることを伝える。
⑥家族の情愛に感謝しており、家族・親族の供養で往生、成仏していると話す。
⑦家族に対しての予言と今後への忠告。
⑧別れの言葉。
⑨魂を送り返す儀式。