ドイツ語講座

まちの楽校本町館というところで行われている地元の市民講座で先月と今月、4回にわたってドイツ語講座を開いた。「ボードゲーム講座」「仏教哲学講座」に続く第3弾である。資格的なものはドイツ語会話学校のゲーテ・インスティテュートで取ったツェット・デーしかないし、留学経験もない。そんな程度で教えられるか自信がなかったが、私より出来る人が受講しにきたら逆に教えてもらうくらいのつもりで開講を申し込んだ。

先日のドイツ大使講演会に参加して、地元長井にはドイツに関心のある人が多いことを知った。南ドイツのバート・ゼッキンゲンという街と姉妹都市になっており、今年もホームステイ計画があるという。以前、ホームステイに参加したという方の話を伺って、ドイツ語しか分からなくて苦労したという。このような講座を開けば、ホームステイを予定している方のお役に立てるかもしれないと思ったのも、開講した動機である。

申し込んで下さったのは8名。バート・ゼッキンゲンクラブ関係者はおらず、ドイツ語は初めてという方がほとんどだった。4回しかないので、文法などは一切省いて、ひたすら自己紹介を丸暗記することを目標にした。あいさつ、自分の名前、住んでいるところ、家族構成、趣味、さらに3回目くらいで自分と家族の職業がドイツ語で話せるようになった。

以前、韓国で学会があったとき、懇親会の席で韓国語で自己紹介をしたことがある。また、インド留学中は、マラーティー語やカシミール語で自己紹介したこともあった。どちらも、まともに話せる言語ではないが、自己紹介できるだけで非常にウケがいい。参加者も、たとえドイツ語はほとんどできなくても、ドイツ人の前で自己紹介ができたら、それだけで心を開いてもらえるだろうと考えた。

毎回、はじめに参加者がひとりずつ自己紹介してから始める。とっさにドイツ語にできない単語(「ハローワーク」「農協」「つつじ公園」など)は和独辞典で調べた。同じことを話すので、回を重ねるごとに、みんなすらすら言えるようになってくる。

2回目はドイツのカードゲーム『ぴっぐテン』を持ち込み、ドイツ語で数字を言いながら遊んだ。頭の中で足し算しながらドイツ語で数字を言うというのは頭の刺激になったようだ。3回目は、ゲーテ/ヴェルナーの野ばらを取り上げ、歌詞を翻訳してからCDに合わせて皆で歌う。音楽の先生が参加していて盛り上がった。4回目はグリム童話の『幸せなハンス(Hans im Glück)』をいきなり原典講読。といってもはじめに日本語の絵本を読んであらすじをおさえてから、意味を取らずに音読し、反復してもらう。ところどころで出てくるキーワード(Gold Klumpen金塊→Pferd馬→Kuh牛→Schwein豚→Gansガチョウ→Stein石ころ)だけを確認した。これまたすごいもので、1時間も音読していると、だんだんすらすら読めるようになってくるものだ。

そんなバラエティに富んだ全4回。最後に、語学は0%か100%ではなく、0%より1%、1%より2%だという話をした。全くできないよりは一言、一言いえるよりはふた言と増やしていくのがよい。私もこの講座を通して、何%か積み増すことができたように思う。参加者からは「とても楽しかった」「ニュースなどでドイツ語が聞こえると耳をすませるようになった」という感想を頂いた。今度は是非ドイツに旅行して、自己紹介を試してもらいたいものである。

ニュースといえば先日のニュースでドイツのメルケル首相がこう語っていた。
“Wir werden bis Ende 2022 vollständig auf Kernenergie verzichten.(我々は2022年末までに原発を完全に停止するつもりです。)”
ここでNHKが「停止する」と訳したverzichtenファツィヒテンは、ドイツゲームでよく見られる単語。放棄する、断念するという意味で、ゲームでは「パスする」と訳すことが多い。こういうところで使われていると意味もなく嬉しくなるが、「停止」ではないような。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


reCaptcha の認証期間が終了しました。ページを再読み込みしてください。