お盆の行事も、昨日でようやく一通り終わった。お盆は盂蘭盆(うらぼん)の略であるとされるが、意味が定かではない。
主に3つの説があって、1つはサンスクリット語のउल्लम्बन(ullambana、ウッランバナ、「架けること」)の音写、1つは古代イラン語のurvan(ウルヴァン、「霊魂」)の音写、もう1つは文字通り供物を載せるお盆である。
サンスクリット語の「ウッランバナ」は、倒懸(逆さ吊り)と訳され、死者の苦しみを表すと説明されることもあるが、人間ではなく供物を枝にかけて、お供えすると考えてもよいのではないかと思う。
出典である『仏説盂蘭盆経』のコーパスを見る。
「飯と百味五果吸灌盆器、香油、錠燭、床敷、臥具を具へ、世の甘美を尽して以て盆中に着け」
「初めて盆を受くる時、先づ安じて仏の塔前に在らしめ」
「応に此の盂蘭盆を奉じ」
「百味の飲食を以て、盂蘭盆の中に安じ」
「盂蘭盆を作して仏及び僧に施し」
これを見ると、盂蘭盆とは、供物の入れ物を指すのではないかと思われる。つまり3つ目の解釈である。
東アジアの儒教圏では、仏教とは関係なく古来より夏に先祖祭祀を行い、特にこれから収穫を迎える作物の豊作を祈念していた。この先祖祭祀は、夏祭りの盆踊りとも通底している。柳田國男は、お盆とお正月行事との類似性を指摘している。仏教が目連伝説などの由来を説くようになったのは後付けに過ぎない。
このとき、すでに行われていた供養を、先祖から僧侶に拡大したものが盂蘭盆であると考えられる。お供えの中身は変わるかもしれないが、方法に変更はなかったのではないか。
というわけで盂蘭盆というのは、精霊棚や墓座などの供物を載せる入れ物、または枝にかけるほうずき・りんご・そうめんなどのことを直接的には指すと、私は考えている。
日本印度学仏教学会のデータベースを見るといろいろ論文もあるようなので、今度調べてみたい。