先祖祭祀の後継者がいないときに、後の供養を全てお寺に任せることを永代供養という。後継者がいないというのは、未婚だったり、結婚しても子供がいなかったり、子供がいてもあてにならないという事情による。その申し込みがうちのお寺にもいよいよやってきた。
儒教の伝統では、子供がいなければ甥姪が引き継ぐことになっているが、一族という観念が薄れ、何でも世帯内で完結しつつある現代においては、先祖の供養も家族や個人の責任になりつつある。本家を頼みにくい世の中なのだ。
永代供養とひとくちにいっても、4つに分けられる。この全部をお寺にお任せすることもあるし、一部を親戚に頼むこともある。それぞれの必要金額を試算してみた。
1.法事
33回忌までの法事をお寺が代行する。現時点で33回忌まであと何回供養があるかを数え、お布施の金額を掛け算する。1周忌から頼む場合は8回あり、1回あたり1.5万とすれば12万円。
2.寺費
寺院の護持に必要な経費を前払いする。一番最後に亡くなった方が33回忌を迎えるまでの年数に、1年間の寺費を掛け算する。1周忌から計算すると32年間で、年5千円とすれば16万円。このお金はお寺ではなく、護持会会計に入る。
3.永代供養墓
管理できなくなるお墓をなくして、お骨をお寺の永代供養墓に入れる。お墓の解体費用は自己負担。永代供養墓は10万円くらいか。
4.仏壇
お参りできなくなる仏壇から、ご本尊と位牌をお寺に納める。無料。
これらを合計した額が、永代供養料ということになる。例えば以下のようなケースを考える。
当主は未婚、両親はそれぞれ23回忌、17回忌まで供養済み。
法事のお布施…1.5万円×5回=7.5万円
寺費……5000円×15年=7.5万円
永代供養墓……10万円
合計25万円(+自分の墓地の解体費用)
最後の当主については、永代供養墓は受け付けるが、上記の法事・寺費の回数・年数に含めない(負担を軽減するため)。
あくまでも総額はお布施としてお寺にお納めいただくので、これを明文化するつもりはないが、納得できる金額の計算方法として提示しようかと考えている。
永代供養は、先祖代々続いてきた家を自分の代でなくすことに抵抗を感じて、ぎりぎりまで何もしないという方が多い。後は野となれ山となれではなく、経済的にも、気力的にも力が残っているうちに、道筋をつけておくのが望ましい。あるいはさらに世の中が変わって、先祖などどうてもいいという人が増え、先祖供養も必要性が感じられなくなっていくのであろうか。