『ブログ論壇の誕生』

社会評論という角度からネットの現在を切り取ってみせる書。毎日新聞低俗記事事件、書き込みが殺到したニコ動の小沢一郎演説、40000回閲覧された志井和夫の国会質問(CGJ「志井グッジョブ」は笑った)、JJモデルブログ炎上事件、光市「1.5人」発言などを取り上げ、その背景まで分析する。
ネットで起きた事件を知るだけでも十分興味深いが、その背後にあるマスコミの弱体化、格差問題、ネチズン意識の変化、ネットの敵視などに対する分析も鋭い。著者が紹介した「ブログ論壇」の意見は感情的なものも多く、必ずしも論理的なものばかりではなかったが、当事者としての切実さがにじみ出ているのが心に響いた。でもだからこそ、ブログが一般問題として論じることが少ないのかもしれない。
一番印象に残ったのはブログの言論責任について。大学や会社に属している人が問題発言をしたとき、日本ではそれがパーソナルな場所(レンタルブログなど)であっても本人ではなく組織にクレームが行ってしまう(たとえば私の場合だったら、ここで書いたことへのクレームが曹洞宗の本庁に!)。おかしな話だと思うが、実際にはよくあることだ。個というものが日本では確立していないのかもしれない。

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