0日目
世界哲学会議という学会で発表しに、明日からソウルに行ってきます。プログラム見たらインド哲学のセッションは9人中8人が日本人(しかも内輪)。原稿は英語で書いたけど、日本語でいいんじゃあるまいか?
1日目
前日の夜、山形からつくばに戻り、昨日の朝出発して韓国にやってきた。家から仁川空港まで6時間、韓国は近い。
空港では迷うかと思ったが、学会のブースがあって乗るバスを案内してもらったので難なく会場に着く。発表者は内輪だったが、聴衆は意外にもたくさんいた。これは日本語じゃすまない。
ひとまず原稿のコピーを探すがこれが難航。「コピ」はコーヒーで、コピーは「カピ」と言わなければ通じない。聞く先々で喫茶店を案内されることになる。ようやくコピー機を見つけて戻ってきたときは私の番が近づいていた。
発表は尻切れトンボのような論文だったが、ともかく無事終了。韓国の先生から質問をいただき、あと時間が余ったのでインド人の先生に不飲酒の厳しさの程度についてこちらから質問した。歴史的な事情で段階はあるらしい。
今回のテーマは「哲学と宗教」だったが、普段の研究とは違った視点のため苦労した。インド哲学の研究のメインは文献学であり、古い記述が後代にどう解釈されたか追っていくのが基本である。哲学的な考察も、宗教的な考察も素人というのが実際のところだ。なかなか難しいものがあるが、得るものも大きかった。
ボードゲーム友達に予約してもらったホテルにチェックインして、それからレセプションパーティへ。久しぶりに会った先生や先輩後輩と24時近くまで会食し、さらにノレバンでカラオケを26時まで。若いなー。
先生から博士論文を早く仕上げるよう言われ、各地で活躍している先輩後輩と話しているうちにやる気が出てきた。お寺とボードゲームばかりでしばらく研究から遠ざかっていた私にとって、気合を入れなおすよい機会になった。
今日は起きたら11時だった。発表もないのでぶらぶらと聞きに行くつもり。
2日目
言語哲学と認識論のセッションに出た。インド哲学と共通する問題意識が多い。
インドの先輩であり大学の後輩でもあるI氏と途中で会ったので夕食へ。グルメでも知られるI氏が調べてきたお店でカニの塩辛とアンコウのキムチ炒めを食べる。2日連続で飲酒しているが、日本で不味いと思っているものがどうして海外では美味いのだろう。メクチュ、ソジュ、マッコリ、何でもござれ。
今日は花の金曜日。これからちょっと学会に出て、夕方からボードゲーム三昧である。
3日目
今日は言語哲学と仏教哲学のセッションに参加。インドでアジャンター石窟寺院を一緒に旅したチェン先生に偶然再会した。博士論文は終わったのかとまた聞かれる。
16時にホテルに戻り、ヴィジョナリーの李さんと出発。1時間ほどのインタビューをした。韓国のボードゲーム事情についてはバルチ氏がフェアプレイ誌にまとめた「日本と韓国のボードゲーム」が詳しいが、あれから4年も経つと事情も変わっている。
ボードゲームカフェバブルは弾け、最盛期の8割が店をたたんだという。その代わりに台頭してきたのが教育ゲームで、親世代が牽引役になった。さらに韓国政府がオンラインゲームをターゲットに始めたコンテンツ支援事業がボードゲームに転がりこんでウハウハな状況になっている。3回の韓国ボードゲームコンのほか、今年のエッセンは10ブース一気に取るらしい。在りし日の頭脳スポーツ協会を思い出す。
インタビューの後、ダンシングバオバブの李さんとそのお友達と落ち合ってボードゲームカフェ初体験。韓国の伝統双六『ユンノリ』の現代アレンジ版と、ポーカー風のピーパー『レクシオ』を遊んだ。
ボードゲームカフェは飲み物やスナックを注文すれば遊び放題というシステムで、メニューでゲームを頼むと店員が持ってきてルールを説明してくれる。ラインナップには重量級のゲームおあったが、カップルや家族連れがライトなゲームを楽しんでいた。韓国のトップセールスベスト3は、『ハリガリ』と『ラミィキューブ』と『スパンキングモンキー』(棒を差し込んでサルをひっかけるアクションゲーム)だそうだ。『プエルトリコ』も『蒸気の時代』も『アグリコラ』も韓国語版が作られているが、そういうフリーク向けのゲームは苦戦しているようだ。
明日もボードゲーム仲間とブランチをしたり、トイざラスに行ったりしてから日本に帰ります。
4日目
先ほど成田に無事着いた。時差はないし、飛行機は2時間かからないし、街角はコンビニだらけだったし(おにぎりはやっぱり韓国海苔だったが)、ほんと外国にいってきた気がしない。
今日は李さんのお友達3人と有機レストランで優雅なブランチとおしゃべりを楽しむ。韓国語の理解度は3パーセントくらいだったが、新しいボキャブラリーをいくつかゲットして満足。
その後、韓国で一番大きいというトイざラスへ。ボードゲーム売場が尋常じゃなく広い。『キューバ』とか『クロノス』の韓国語版まであったが、値段はどれも8000円ぐらいと高め。最近のユーロ高で2割増になったんだそう。買う人いないんじゃ? おかげで半値近い国産が売れているそうだ。日本もそのうち似たような状況になるかもしれない。
最後にビジョナリーの新しい事務所を見せてもらう。オンラインゲームのキャラクターを使ったボードゲームがヒットしたのと、政府が主催したコンテストで資金を得たことで、新事業を展開する目処が立ったようだ。10月のエッセン合わせで2つ新作を中国で生産中。
仁川空港までリムジンバスで1時間。帰りは思ったほど混んでなかった。ただ飛行機が旧機種で個人用モニターがなく、行きに見た『ヒーロー』の続きが見られなかったのが残念。家には23時30分ころに着く予定。