視聴率、内閣支持率、経済波及効果、都道府県ランキングなど、説得力があるデータを検証し、データリテラシーを提案する。
世論調査は無作為抽出で回答率が高くなければ信用できないというのが本書の基本的な主張だ。たとえば成果主義の調査では、導入している企業が8割以上とあるが、回答率は17%しかない。回答しなかった会社は成果主義に否定的で、導入に消極的とは考えられないのか。
同じように社長の平均年収が3200万円だったというが、回答率はわずか5%。回答しなかった社長のほうが報酬が低いのではないかという推測ができる。
いわれてみると当たり前なのだが、世論調査ではよく起こることである。インターネット調査などはその典型で、インターネットをしている人→そのサイトにアクセスしている人→わざわざ調査に回答する人という幾重ものバイアスがかかって、特定の傾向を持った人の回答率が自然に高くなる。それをあたかも日本人全員の傾向だと思うのは早計だ。
また0.1%を競う視聴率は、ごく一部のサンプル調査に基づいており、3〜4%の誤差はつきものだという。0.1%に踊らされて広告費を振り分けるのはナンセンスだ。
そのほか選ぶデータや算出方法によって結果ががらりと変わる都道府県ランキングや国別競争力、マイナス部分を考慮しない経済波及効果○億円、TOEICなど誰でも受ける日本と一部の英才しか受けない他国で比較される英語力、アメリカ人はキャンプ外の犯罪しか記録されない沖縄米軍の犯罪率、一般職だけで算定されるのに生産労働者も含めた民間と比べられる公務員の給与水準、汚水処理は進んでいるのに欧米と比べて低いと言われ続ける下水道普及率、国鉄民営化で地方自治体に引き継がれた負債など、単なる見かけだけのものや、ときには政治家の主張に都合のいいだけのデータがたくさんで目からウロコ。
データをグラフや表で示されると納得してしまうことが多い今、詭弁として悪用される可能性も高い。検証は実際難しいとしても現実を反映していない可能性は十分にあるということを頭に入れて臨むのは大切なことだと思う。