冠婚葬祭は、しきたりや作法にがんじがらめにされた独特の文化である。特に結婚と葬送について明治から100年の歴史をひもとき、少婚多死社会における最前線に切り込む。
100年の歴史が示すことは、「人の習慣は永遠不滅のようで、変わるときには急激に変わる」ということだ。神前結婚式とチェペルウェディングにしろ、祭壇と霊柩車にしろ、社会の変化に合わせて業者がうまいことしつらえ、あっという間に普及したものである。
結婚も葬送も儀式である以上、形式的であることを免れない。皇室や有名人が新しい形式を生み出し、新しもの好きの世間が追随する。「世間並み」という意識でその形式を踏襲して普及し、次第に意味を見出せなくなって形骸化する。それから新しい形式に移行。歴史はこの繰り返しなのであった。
現代では何が起きているかというと、ゲストハウス婚とレストラン婚、家族葬と継承者のいらないお墓だという。この背景には家観念の完全な崩壊があり、都市部から全国に広まっていくだろう。
葬送の項は類書の要約に過ぎず、普通にマニュアル風になってしまっているが、結婚の項は独特のシニシズムが存分に発揮されていて実に面白い。ウェルカムベア、ケーキ入場、ケーキシェアリング……ほんとに恥ずかしいことを堂々とやるものなのだ。
「結婚式の招待状が舞い込んだら、まず見るべきは会場である。舌を噛みそうなカタカナ名前の開場だったら要注意。スカした雰囲気の招待状だったらますます要注意。敵は(敵ではないが)オリジナルの演出を目論んでいる可能性がある。」
ほかに昔のマニュアル本に記載されていた新婚初夜の過ごし方など爆笑。もう結婚した人もまだしていない人も、したい人もするつもりのない人も一読を。
葬送についても少しシニカルな視点で突っ込んでほしかったものだが、激しく実際的なので(墓地の移転は行政書士に手続きを頼むとか)、自分や家族の死後について心配な人には有用だろう。