ムチャクチャなタイトルだが、内容はしっかりしている。
筆者は(数学など限られた分野を除いては)正しさは相対的なものであるという観点から、理屈の上に成り立っている議論一般を詭弁とみなす。そして上手な詭弁によって相手を説得することが大事であると説いている。
このことを理解するために、詭弁でないもの=理屈がないもの、理屈があっても説得力がないもの、そして説得力がある上手な詭弁の順で例示していく。扱われる論法の数は100以上。体系的に整理されているので分かりやすい。アメリカの誤謬論に言及している点も面白い。
詭弁というとネガティブなイメージがあるが、誠実な詭弁もあるわけで、その論法を学ぶことは建設的な議論をするのに大いに役立つと思った。
物事の正しさはたいていの場合、アプリオリに与えられるのではなく、反論に堪えることで醸成されていくということは、あまり認識されていない。科学でさえも、その正しさは新説が出るまでのものに過ぎない。詭弁も反論されない限り、正しいものとして説得力をもつのだ。
古代インドでも、竜樹という仏教徒が発明した詭弁は、その後300年ほど正しいものとしてみなされていた節がある。