最初に断りがあるが、お寺がどういう収支でやっているか・やっていくべきかを記したものではない。そうではなくて、経済学的な視点から書かれた仏教の歴史とお寺の現在、そして展望である。経済学的知見は興味深いものがあるが、仏教の通史的な部分はよくある仏教入門とあまり変わらない。
結論で著者は、お寺はお墓を切り離すこと、檀家制度を解消することを唱えている。そして信教の選択をしやすくした上で、質で勝負すべきだと。お寺に経済性を求めることの必要性は私も感じるが、死者を考慮に入れずに生きている人だけの救済を強調する従来の仏教原理主義・葬式仏教批判の枠を出ていない。
死者こそ、生きる者の道標となる。死から目をそらさないことが、宗教か見せかけの宗教かを分けるのではないだろうか。