映画(28)ノスタルジー

パリニータパリニータ(結婚できる?)
【ストーリー】
 1962年コルカタ。実業家の息子シェーカルは結婚式を前に落ち着かない気持ちでいた。隣りの家に行って幼なじみのロリタに会う。ロリタは「どうして触ってくれないの?
私は既婚者だから何をしてもいいのよ」とシェーカルに歩み寄ったのに怒って突き飛ばす。泣き崩れるロリタ。シェーカルは再び自宅に帰って一心不乱にピアノを弾き始めた。そして回想シーンが始まる。

 2人は小さい頃から仲が良く、ロリタは毎日のように遊びに来て、シェーカルがピアノを練習するのを聴いていた。信頼の深さはシェーカルは棚の鍵を預け、自分の小遣いをロリタが使えるようにしていたほどである。2人は子どもから青年へ、青年から大人へ。シェーカルは作曲家に、ロリタはシェーカルの父の会社の秘書になるが、夜になるといつも通り遊びに来て、シェーカルの新曲にコメントするなどしていた。シェーカルは父親のすすめで見合いをするが、全く乗り気ではない。
 ところでロリタの家は裕福ではなく、古い邸宅を担保にシェーカルの父から借金をしていた。ある日ロリタは会社で、シェーカルの父がその邸宅をホテルにする計画を知ってしまう。早く借金を返さなければ自宅が奪われる。シェーカルに訴えても冗談に取られ、親に訴えてもそんな金はないという。そこに助け舟が現れた。近所にやってきたイギリス帰りの実業家ギリーシュである。ギリーシュはロリタを一目で好きになり、ロリタが困っているのをみて15万ルピーをすぐに調達する。
 こうして借金は無事に返され、邸宅は守られたのだったが、事態は悪い方向に進んでいく。ホテルの計画を頓挫させられたシェーカルの父が怒って、ロリタがギリーシュに体を売ったんだろうと言いがかりをつけ、会社をやめさせてしまったのである。シェーカルもロリタがギリーシュと懇意にしているのを見て嫉妬し、ロリタをなじる。しかしロリタはシェーカルの家で真実を訴え、2人はお互いに愛し合っていることを知る。結婚式の真似をしてネックレスを交換し、肉体関係をもった。
 それからシェーカルが幸せいっぱいの気持ちでダージリンに言っている間、怒りの収まらない父は両家の間にレンガの壁を作らせる。それを見てすっかり驚いたロリタの叔父は心臓発作を起こしてしまう。帰ってきたシェーカルに知らされたのは、叔父の手術のためロリタ一家がギリーシュと共にロンドンに渡るということだった。ロリタ一家を見送ることもできなかったシェーカルは、後にロリタの叔父が亡くなったこと、そしてロリタがギリーシュと結婚したことを知る。意気消沈したシェーカルは夜になるとギリーシュに抱かれるロリタの姿を想像し、ピアノを弾いて気を紛らわせるのだった。そして音楽の仕事を止め、父の仕事に打ち込み、お見合いの相手との結婚も承諾する。
パリニータ 回想シーンが終わってシェーカルの結婚式の当日となった。自宅で悶々としているシェーカルに、ギリーシュが現れる。彼はロリタ家の邸宅の権利書を渡し、涙ながらに驚愕の事実を告げる。彼はロリタに求婚したが、「私は既婚者だから」と言って断られ、誰と結婚しているのかを決して明かさなかったと言う。その結果ギリーシュはロリタの従姉妹と結婚していた。そこでシェーカルは気づく。ロリタの夫は自分だったということを。
 権利書を手に入れて大喜びの父に絶縁を申しつけ、シェーカルは狂ったように外に飛び出す。そして父が作った壁を一心不乱に壊し始めた。「やめろ!」父が言うが手を休めない。やがてシェーカルの音楽の仲間、父の放逸を我慢していたシェーカルの母、挙句に父の部下までもがシェーカルを応援し始める。「やれ!やるんだシェーカル!」
 レンガが崩れるとそこには、ギリーシュに引かれたロリタが待っていた。シェーカルは壁を通り抜けてロリタをしっかり抱きしめた。
【感想】
 困難を乗り越えて2人が愛を成就させる。その最大の困難が強権的な父親だというのは現代に生きる日本人からすれば現実感がないが(同じことは「カビークシーカビーガム」でも思った)、困難の原因は何であれ、愛した人のために人生をかける姿は心を打つ。古典文学作品を映画化したものだというが、このところ純愛ものが少なかっただけにとても心にしみた。でも至るところに笑いもちりばめられており、お涙頂戴というふうでもないので純愛ものだからといって重苦しくはない。満席が続いており、人気の高さをうかがわせる。
 シェーカル役にサイフ・アリ・カーン。「カルホーナホー」「ハムトゥム」では軽い伊達男のキャラクターだっただけに、この映画で根が真面目なお坊ちゃんの役をやりおおせたのが驚く。気が狂ったようにピアノを弾いて気を紛らわすシーンは圧巻だった。
 ヒロインのロリタ役にヴィディヤー・バランという新人。美人だし演技力も素晴らしかったが、声が低く、ちょっと老けてみえるので地味な感じが否めない。演技派女優といった感じか。ダンスシーンはほとんどなかったが、踊りはどうなんだろうか。
 あとは60年代のレトロな雰囲気が映画全体に出ていたのが面白かった。色調もおそらく意図的にセピア色にしていてノスタルジーを喚起させる。ロンドンに向かう空港にいたスチュワーデスの服装がいい感じだ。昔の婦警さんのような帽子をかぶり、どでかいトランシーバーを肩からさげていた。

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