今の住まいは水道が1日1時間しか来ない。ワドガオンシェリ(バニヤンの村シェリ)という村が急激に開発されているため、水の供給が追いつかないのだ。朝の7時から8時まで、この間にみんなは水をめいっぱい溜め込む。
私の住んでいる部屋は幸い、水槽があって30リットルまで溜めておくことができる。毎朝供給されれば、洗い物・掃除・水浴・トイレ水洗・洗面にわたって困ることはない。
しかしこの水槽、ふたがついていないこともあってだんだん汚れてくる。中に緑の藻が生えてくるのだ。日本でも団地ではよく聞かれる話だが、この水で口を濯いだり野菜をゆでたりすることはあっても、飲んだりスープに使ったりはしないようにしている。味もちょっと変だ。
汚れもひどくなってくると、排水口がつまって水が出なくなる。こうなったら業者の出番。なにしろ水槽は4階の壁に設置されているのだ。いつも頼んでいる電気屋で水槽掃除を頼む。
ここの掃除は初めてだという男がやって来たのは翌日。あまりに高いところに設置されているのを見て口をあんぐり開けている。「……無理だ。」「えー? 前はできたんんだぞ」「……」延々と眺めた挙句、その男は帰ってしまった。仕方なくまた電気屋に出向く。「あの男、怖がってやらないんだよ」「今度は大丈夫だ、明日行くからな」
例によって翌日もその次の日も来ない。電気屋に行って「どうして来ないんだ?」と聞いたら「じゃあ、今行くから、30分後な。」そして来たのは3時間後だった。昼寝でもして待つしかない。2人で来て様子を見た後、もう1人連れてきて3人でやっと作業開始。はしごを足場に水槽を取り外す。初めての男はかなり足がすくんでいたが、2人にからかわれていて見ていると楽しい。
中の藻はブラシ程度では取れず、トイレクリーナーをかけたり、しまいには包丁で削ったりした。これを見ているとこの水槽の水で口を濯いだりするのも考え物かと思ってくる。それでも1時間ほど作業すると、汚れはだいぶ落ちていた。
「見てくれ、この水槽、そこかしこに傷があるだろう? これじゃ水が漏れそうだから、交換したほうがいいぞ」掃除が終わると3人は私を呼んで新しい水槽の購入を勧め始めた。「ここは私のじゃない。大家に聞いてくれ」と大家に電話して話をしてもらう。当然ながら大家の答えはノー。そのままでいいと言う。そんなに大きな傷ではなかったが、何となく掃除中に広がったような気がする。
最後は値段交渉。300ルピー(750円)というので大家にまた電話。男たちは「これだけリスキーな仕事をしたんだから」と頑張ったが大家の提示は200ルピー(500円)。結局250ルピーに落ち着いた。
水槽の排水口がつまって水が出なくなって3日間。温水器は水槽につながっているためお湯も出ない。朝早起きして冷たい水を浴び、トイレにも行っておく。バケツに水を汲んでおくのだがお手伝いさんが全部使ってしまうので1日中水なしの生活だった。飲料水だけは20リットルで70ルピーのものを確保しているが、それで洗面したり、トイレを流したりするのはもったいなさすぎる気がした。
その上電力不足で計画停電が1日3時間。発電所が故障で4つも止まっているためらしく、再開の目途は立っていない。その上電話も原因不明で断線中。これについては解決したらあらためて電話格闘記(6)を書く予定(はたして解決するのか不明)。