カシミール語は独特の言語だ。基本的な構造はダルド語という言語らしいが、時代を経るにつれてサンスクリット語、ペルシア語、英語から多くの語彙を取り入れてきた。
イスラム教徒ならではの挨拶。ヒンドゥー教の「ナマステー」と同じく、おはよう、こんにちは、こんばんは、さようならの全てが「アッサラーム・アライクム。」 ただしヒンドゥー教徒には「ナマステー」と言う。宗教によって使い分けなければならないのは少し神経を使うが、間違ってもあまり目くじらを建てる人はいない。今日、近所から遊びに来ていたおばあさんに「アッサラーム・アライクム」と挨拶をしたらタヒルさんから「この人はナマステーだよ」と教えてもらったが、おばあさんは「かまわないかまわない」と笑顔。
一方、挨拶されたほうは語順を逆にして「アライクム・アッサラーム」と返す。「アッサラーム・アライクム」「アライクム・アッサラーム」…こうして並べると語が対称になっており、偶像崇拝を禁じるイスラム教の抽象的な美しさを感じる。意味は「あなたに平和あらんことを」だが、そんなに重くなく町中のいたるところで聞かれる。男同士ならば握手をしながら言うことが多い。時には抱き合っている姿も。いただきますは「ビスミッラー」、ごちそうさまは「アルハムドリルラー」。そして「インシャーラー(神の思し召しのままに)」「クダハフィス(神のご加護あれ)」は口癖のようにいつも使う。いずれもアラーの神に感謝をささげる言葉だ。
自己紹介。「アッサラーム・アライクム、ミョン・ナーウ・チェ・オノ。ミョン・レッツ・チェ・アティーシャ。アティーシャ・ヴェーヌー。シュクリヤー。バ・アウス・ジャパン・ピヤット(バ・ミヤール・プネー・ピヤット)。ミョン・ガリク・チェ・ミェン・ザナン・キョーコ、ミェン・クール・アキコ、ビ・バ。ミョ・チェ・キターブ・パルン、インターネット、ビ・ボードゲーム、パサン。ツァ・サンキット・ガイー・クシー。」
夕食の前後、女性陣はテレビを見る。9時半から11時半が夜更かしなインドのゴールデンタイム。『どこの家にもある話(カハーニー・ガル・ガル・キー)』と『姑も昔は嫁だったから(キョンキ・サース・ビー・バフー・ティー)』の二本立て。どちらも同じ脚本家で、もう3年も続いているという。タイトルから想像もつくが嫁・姑・小姑の難しい関係を扱った話で、日本でいう橋田ドラマのような感じだ。おそらくわざと平凡な顔の役者を起用し、毎日見ても飽きないようにしている(主役が楽太郎師匠のような俳優だった)。展開は冗長でリアクションは大げさ。ショックを受けるシーンでは必ず「ガーン」という効果音と共にアップとなり、それをスローモーションで繰り返す。男性陣はお父さんを除いてケッという顔で見ているが、女性陣は真剣だ。
シュリナガルでは毎日4時間、計画停電がある。時間帯は朝・昼・晩とシフトするが、不便だと感じることが多い。各家には発電機が用意されているが、あまり電気を使わないよう、テレビもほとんどつけずラジオを聴く。夜の9時半以降は計画停電がなく、ゴールデンタイムのテレビ鑑賞ができるというわけだ。しかし計画でない停電は1週間に2,3回あり、真っ暗な夜を過ごさなければいけないときもある。このあたりはシュリナガルだけの話ではない。ただ、シュリナガルは水が豊富で断水はまずないのが幸せだ。ギザと呼ばれる温水器が停電で止まっているときにはガス温水器(ガス・ギザ)がある。
今日の観光スポット
パールガーン
シュリナガルから96キロ東にあるリゾート地。途中まで国道1号線で道が広く、車で飛ばせば2時間で着く。周囲を高い山に囲まれ、リッダー川に沿って松林と芝生が広がっている。川は床石のせいで青く見え、川辺でその色とせせらぎを聞きながらのんびり過ごす。来る途中では遊牧の羊や山羊、馬などをよく見かけた。また急流を利用して7人乗りゴムボートも楽しまれていた。
リッダー遊園地はジャンム・カシミール銀行が経営しているアミューズメントパーク。メリーゴーランドやパイロットなど7つのアトラクションが動いていた。私とタヒルさんは回転・遠心力系(?)が苦手なのでカートだけを楽しむ。昔ナムコ・ワンダーランドにあったお互いにカートを衝突させ合うアトラクション。カップルが乗っているカートをついつい集中攻撃してしまうのは昔の癖だ。平日はがらがらだったが、日曜日は混みそう。