『「男女格差後進国」の衝撃 無意識のジェンダー・バイアスを克服する』

著・治部れんげ(小学館新書、2020年10月)。最近ジェンダー平等の本ばかり読んでいる。

世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダーギャップ指数」ランキング。156カ国中日本は120位(2021)と底辺にいることは毎年繰り返し報道されているので知っている人も多いのではないかと思う。確かに改善は進んでいるが、世界の改善スピードに追いついていない。政府の男女共同参画にも関わる著者が、政治・会社・家庭にどのような無意識のジェンダーバイアスがあるか、それをどう克服するかを考える。

育児や介護の公共サービスが厚い北欧諸国、育児や介護を外注できる新興国・途上国が上位になりやすいランキング自体に問題がないわけではない。しかし地方における若者回復率の男女差が大きい(女性は地元に帰ってこない)のは、社会的・経済的な損失であることも事実であり、ランキングを上げるためではなく、日本社会の発展のためにジェンダー平等は欠かせない。

2019年のG20大阪サミットで採択された首脳宣言では、女性のエンパワーメントに関する項目が前年のブエノスアイレス宣言以上に盛り込まれたという話は知らなかった。その陰にはW20日本運営委員会(著者も所属)による提案書のとりまとめと、外務省女性参画室長の調整があったという。このように、男女格差の解消は、国でも地方でも民間と行政の連携が欠かせないと著者は説いている。

ジェンダー平等に向けて尽力している人たちの努力が日本でも実るよう、私たちにできることはちょっとした気配りと発想の転換である。職場では「あなたが今、言おうとしていることを、相手が上司の配偶者だったり、上司の子どもだったりしても言いますか」、家庭では「母親は家で息子を甘やかしてはいけない。最低限の身の回りのことは、子どもの性別に関わらずできるように育てる」「子どもの性別を云々するようなことを実家の親が行ったら、そんなことは言わないでほしいと父親がきっぱり拒絶する」、学校では「男性の先生たちが子どもが熱を出したからとお休みをしたり、赤ちゃんをこういう風に抱っこしたと話してくれることで、自然とお父さんも育児をするという発想が根付く」……できることは少なくない。

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