和久田学・著。
今年も小学校の就学時健診の季節がやってきた。小学校(今年は8校)からの依頼で、子どもが来年1年生になる親に対して、健診を受けている間に子育てのお話をする。生活リズムを中心に、親同士で話し合ってもらうスタイルで来たが、今年はコロナで席を離したりしているところもあるようなので、親子のコミュニケーション絡みで話のネタ仕込み。
勉強が好きでない子には無理に勉強をさせず、得意なことをたくさんさせて自己効力感を高めれば、自ら不得意なことにも向かうようになる(勉強は子供を幸せにすることもあるが、不幸せにすることもある)。
―「宿題はしたの?」「勉強しなさい」はやる気がなくなるもの。じゃあテレビゲームを推奨するのか?というと、単なる現実逃避なのかもしれないので難しいところである。
叱ることには「弁別の法則(叱る人がいないときには元通り)」「派生の法則(叱る人が嫌いになる)」「反発の法則(仕返しや八つ当たり)」と、叱る姿が子供のモデルになってしまうという副作用がある。叱る状況ができるのは課題設定や環境設定が不十分なのに、その子どもにできないことを期待したり指示したりしてしまっているから。叱る状況にならないように親が先回りしていく(結局、「叱る」は大人の負け)。
―日曜の夜に必死で宿題しているのを見かけたら、次の週は土曜日のうちに宿題を終わらせるよう促すとか、作戦が必要である。
ほめる技術として重要なのは「即時性(対象となる行動のすぐ後にほめる。注目するだけでも良い)」「明示性(ほめていることを明確に伝える)」「具体性(良い行動の内容をほめる)」「多様性(いつも同じではなくさまざまなやり方でほめる)」の4つ(ほめるのはタダだが、技術が必要)。
―うちは10年以上「上手だね~」を使ってきて多様性に欠けているのでいい加減アップデートしたい。
親や教師の昔話は子供に自信を持たせるくらいならよいが、因果関係や一般化をしないように注意(経験則は使っていいときとそうでないときがある)。
―東大合格に絡められると厄介なので言わないように気をつけている。受験が「実力3割運7割」というのは結構当たっているように思われる。
テストの点数に一喜一憂するのではなく、その前の段階でどれだけ努力したのかを評価することで、失敗を恐れず挑戦する気持ちや困難なことに立ち向かう態度を身につける(「子供のやる気が問題だとする考え」が問題)。
―子供の様子を見ておくと「頑張ったね!」が実のある言葉になる。
さまざまな欲望を抑制し、しなければならないことに集中する「抑制脳」は、言葉と関係している。言葉を十分発達させるように支援すれば、抑制もできるようになる。計画して振り返る、頭の中にあることを言語化することで「実行機能」が育つ(思春期はリスクがあるが、おもしろい)。――親が子供にきちんとした言葉で説明し、子供にも説明を促すことで、多少理屈っぽくなっても効果がありそうである。
親がスマホをいじっていると子どもに「あなたと一緒にいることよりも、スマホの方が大切」というメッセージを与えているかもしれない(子育てを楽しめる状況をつくる)。
―親子に限らず、知人の前でもそういうメッセージだと取られないように気をつけよう。