執筆は博士課程を出て大学非常勤講師やフリーライターをしている女性の方々。
- 性の院生や非常勤講師が結婚に踏み切るのは、収入よりも社会的承認が動機で、そこには性別役割分業規範が見え隠れしている(p.79)
- 研究者採用の優先順位は既婚男性>独身男性>独身女性>既婚女性(p.83)
- 研究者のコミュニティは男社会であり、女性は「スカートをはいた男になる」か「従順な女らしさで勝負する」という両極端なありかたで適応するしかない(p.91)
- 女子にとっての学歴とは、現実的には高学歴男性と出会うアイテム、また母となった場合に身につけておくべき教養アイテムであり、「地位表出機能」しかない(p.117)
これが昭和ではなくて、わずか5年前の話なのががっかりするが、振り返って考えれば私が在学していたインド哲学・仏教学の世界も当てはまることばかり。著者は人文系と芸術系ばかりなので、アップデートが進まない背景には人文系特有のポストの少なさ(大学以外に仕事がない)や、女子が何となく人文系を選びやすい風潮(大正時代の教員養成から続くものらしい)があるんだと思う(妻いわく、理系の高学歴女子にこういったことはもうあまりないとのこと)。食えないと分かっていて進学してしまうのは、女の子のなりたい職業の平均給与が、男の子のなりたい職業の平均給与を大きく下回る構図を想起させる。
人文系女子を否定するものでは決してないが、この不均衡を変えるために、理系女子のロールモデルとして、中高で理科・数学の女性教師がもっと増えてほしい。例えば長女が高校で理系なのは、妻が理系女子として働いているのが大きく影響していると思う。