低所得国で初等教育を修了する女子の割合、過去20年で極度の貧困にある人の増減、世界の平均寿命、2100年の子供人口予測、世界で予防接種を受けている1才児の割合、世界で電気を使える人の割合……こういった質問に、3択で最悪のものを選びがちなのはなぜか、そして世界は昔と比べてどれだけよくなっているかということをデータで示した本。300ページ以上あるが、面白くて1日2日で読み終えてしまった。
P.マッツァリーノがいう「昔はよかった病」は、世間話から高僧の談話まで到るところで見受けられる。本書ではそれを「ネガティブ本能」(「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み)、「パターン化本能」(「ひとつの例が全てに当てはまる」という思い込み)、「焦り本能」(「いますぐ手を打たないと大変なことになる」という思い込み)などと名付け、実際はそうなっていないことを示す。暮らしが良くなるにつれ、悪事や災いに対する監視の目が厳しくなった結果、悪いニュースが目立つという現状や、「悪い」と「良くなっている」は両立するということに、私達はなかなか理解が及ばない。
例えば虐待が連日報道されているのを見て、「ひどい時代になった」という方がいる。しかし昔は当たり前過ぎて問題視もされなかったのではないか。そして今は生活水準が上がって監視の目が厳しくなり、悪いことであるという認識が広まったのではないか。しかも虐待されている子供たちに対して、ボランティアで何かできることはないかと考え、行動する(ほど余裕のある)人々も格段に増えている。全てがそうでないし、まだまだ改善の余地はあるけれども、過去と比べて良くなっていると捉えるべきだと思う。
筆者は、自分の意見に合わない新しい情報や、専門以外の情報を進んで仕入れ、意見が合わない人や反対してくれる人に会って、自分と違う考えを取り入れることを勧める。また、人を巻き込むために話を盛っているうちに誇張であることを忘れてしまい、現実的な解決策に目が向かなくなることにも注意を喚起する。ネットではなおさらその傾向は強まるだろう。謙虚で誠実であることを心がけたい。
「この本で最も衝撃的」として筆者が紹介するデータは、世界の子供人口がすでに横ばいで、女性一人あたりの子供の数は1965年の5人から、2017年には2.5人になっているもの。これは極度の貧困から抜け出した人々が、子供をたくさん作る必要がなくなり、良い教育を受けさせたいと思うようになったからであるという。我が家のように3人も子供がいれば、世界的に見て今や多いほうだというのに驚いた。