仏滅後500年後に新興した大乗仏教が、どのような意図があって生まれ、どのようにして自らを権威づけていったかを丁寧に読み解いていきます。死後神格化されていったブッダを、「誰でも仏になれる」という主張のもとで再び開かれた存在にしていった大乗仏教の運動は、実は「死せるブッダをよみがえらせる」原点回帰であったといいます。維摩経や法華経といった大乗経典も、お釈迦様の生涯に即して作られているということが分かり目から鱗でした。
伝統仏教から大乗仏教という運動は、瑩山禅師による曹洞宗寺院の展開、さらに梅花流詠讃歌の普及とよく似ていると思います。それは脱皮であり、原点回帰でもあります。
仏教が過去の遺物ではなく、現代に生きる人間の苦しみと真に対峙する宗教であるなら、古くなった装いは潔く脱ぎ捨て、脱皮し続けなければならない。(中略)ブッダはさらなるよみがえりを待っている。(あとがき)