エッセン国際ゲーム祭2006

今年もエッセンは、非ドイツメーカー・デザイナーの活躍という印象をもった。ドイツ産は確かに絶妙なバランスが取られていて安心して遊べるが、これは新しいと感じさせる要素があまりない。既存の要素の新しい組み合わせという感じだ。それに対し非ドイツ産はバランスこそ今ひとつ取れていないこともあるが、新しい要素がある。ドイツのメーカーがこうした作品を取り込もうとしているのも頷ける。思えばドイツゲームの発展は、これまでも世界中からアイデアを集めることによって成し遂げられてきた感がある。これからも新しいテイストをもったデザイナーが、ドイツから発信するというスタイルは続くだろう。

イスファハンメディチVSストロッチフィジーウルノートルダム大聖堂スペースディーラータラサンティ・アンノミスタージャックヘマゴールアンダーグラウンドシュヴァーベンの百万人タルヴァ陰謀と殴打よくある女、よくある男悪魔城への馬車行スポーツは殺人だトゥルブレントアナサジハーメルンモンスター画家ユルヘンとモンスター冒険者の谷それっとどこよウプサラ

イスファハン(Ysphahan / S.ポーホン / イスタリ)

イスファハン選びたい、選べない

『イス』『ケイラス』『ミケリノス』とヒット作を連発しているフランスのメーカーの新作。「下家を睨みながらの行動選択」がこのメーカーのコンセプトと見た。
行動はダイスで決める。8つのダイスを一度に振り、出目の小さい順に行動シートに並べて、スタートプレイヤーからひとつずつ選んでいく。置かれたダイスの数によって店に自分の品物を置いたり、お金やラクダを得たり、商人を自分の店に移動したり、カードを引いたりという展開。先に選ぶ人ほどよい行動を選択できるが、後手番に絶好の行動を封じることも考えておかなくてはならない。
得点は自分の品物が揃ったとき、商人をつかって品物をキャラバンに出したとき、そしてお金とラクダで建物を建てたときなどに入る。建物には、収入や得点を上げる特殊効果もあるので、早めに建てて活用したい。
いろいろな要素が詰まっているがゲーム自体は3ラウンド、45分ほどの軽めな印象。行動選択に戦略性をもたせつつ、ダイスロールの華やかさも加え、さらに細部にわたって楽しめる工夫が行き届いたゲームである。

メディチVSストロッチ(Medici vs Strozzi / R.クニツィア / リオグランデ)

値付けが悩ましいクニツィアゲーム

名作『メディチ』をクニツィアが2人用にアレンジ。といっても競りは使われておらず、クニツィアらしいジレンマがつまったやりこみがいのあるゲームになっている。
3つの船に品物を積んで港に出荷し、その出荷量が多いほうに収入が入る。品物は手番プレイヤーが袋から1~3枚を引き、値段を自分でつけて相手に提示する。相手が買えば相手の手番。相手が買わなければ自分がその値段で買わなければならない。徹底的な相場観が必要だ。
買い取った品物はすぐ自分の船に積み、港に出航する。3艘の船は大きさに違いがあり、また3つの港はそれぞれ指定された色が異なる。どの船に積んで、どの港に出航するかは、相手の動向も読んで。
購入に使ったお金は銀行に支払うので、いかに相手にたくさんお金を使わせるか、自分は節約するかを考えつつ、ほしいタイルを上手に集めたい。秀作。

フィジー(Fiji / F.フリーゼ / 2Fシュピーレ)

一斉公開の競りゲーム

日本にも根強いファンがいる2Fシュピーレが発売するといってからずいぶん長いこと経っていたゲーム。色とりどりの宝石と顔チップを集めるのが目的だ。
カードを並べると、何色の宝石を最も多く(少なく)握った人が、何色の宝石をいくつもらうかが決まる。これを見ながら手持ちの宝石を握って一斉に公開。場合によっては勝って損することもあるかもしれない。
ラウンドが終了すると、手持ちの宝石を調べて順位を決める。順位の決め方もカードによって、何色の宝石が一番多い(少ない)かで決められている。この設定をいじる特殊カードもある。上位から怖い顔チップをもらい、これが一番多い人が勝つが、その顔チップはどれももらってうれしくないようなへちゃむくればかり。フリーゼのひねくれぶりが遺憾なく発揮されていて、またファンを増やしそうだ。

ウル(Ur / P.モリ / ホワッツ・ユア・ゲームズ)

5種類の能力を駆使

チグリス・ユーフラテスの王国を舞台にタイルの陣取りをするゲーム。目的はできるだけ多くの色のタイルを集めること。またタイルには攻撃や移動など5種類の行動が指示されており、手番にはそのうち1つを選んで並べられたタイルに自分の勢力を広げていく。
手番の行動は前の手番でタイルを取って決めておくので、次の手番の人が何をしそうか予想しながらゲームを進めなければいけないという、戦略的な面白さがある。ボーナスカラーになるジッグラトを手に入れて得点を伸ばそう。
攻撃にはそれなりの犠牲を伴うので、地道な成長と賢いコマ回しが要求される良質の陣取りゲームだ。

ノートルダム(Notre Dame / S.フェルト / アレア)

リソースの配分が要

『プエルトリコ』のようにマイボードにコマを置いて勝利点を集めるゲームだが、そのマイボードが他の人とつながって陣取りも生まれている。変なかたちをしているのは、3~5人のいずれでもつながるようにするため。
行動は9種類の行動カードで行う。それぞれの行動はボードのマスに対応しており、コマを置いてお金や勝利点などをもらう。2つ目のコマならば2つ、3つ目のコマならば3つと成長していくのが楽しい。
行動選択で面白いのが『操り人形』のようにカードをほかの人に回す方法。各自山札から3枚を引いて、そのうち1枚を選び、残りの2枚を左どなりの人に渡す。全員が右どなりの人からこの2枚を受け取り、1枚を選んで残りをさらに右の人へ。こうして受け取った3枚のカードから、順番に2つの行動を実行する。自分がやりたい行動と、ほかのプレイヤーにやられたくない行動を見極めよう。
行動が終わったら、3人の聖職者にワイロを贈って勝利点などの特権をもらう。聖職者の内容はラウンドの始めに決定されるので、どの特権をもらうかにらみつつ行動を選ぶのも肝心だ。しかし、ワイロの後で疫病ポイントが入り、これが限界を越えると査察が入って勝利点を失ってしまう。疫病ポイントを減らす施設をグレードアップして対応したい。
これで1フェイズ。再び3枚のカードを引いて1枚を選び…と繰り返す。3フェイズで9枚の山札が全部なくなったらラウンド終了となり、中央のノートルダム寺院を清算。ラウンド中ここにコマを置いてお金を寄付していた人に勝利点が入る。3ラウンド終了時に勝利点の多い人が勝利だ。
勝利点は通常のコマを置いたときに少しずつ入り、ワイロやノートルダムへの寄付で一気に入る。どこに力を入れれば効率的に勝利点を集められるのか、プレイヤーにはさまざまな選択肢があってストラテジーとタクティックがほどよく入り混じったゲームだ。

大聖堂(Die Säulen der Erde / M.リーネック、S.シュタトラー / コスモス)

リソース管理が決め手

同タイトルの小説(邦題『大聖堂』)をテーマにしており、「大地を支える柱」である大聖堂を皆で建築するゲーム。
大聖堂を建築するには石、砂、木材の3つの資源が必要だ。プレイヤーは建築家となって労働者を分配して資源やお金を集め、特殊能力や効率的に建築できる人材を集めて勝利点を集める。1ラウンドが終わるたびに中央に大聖堂のパーツが建っていき、6ラウンドで全部のパーツが建ったときに勝利点の多い人が勝ち。木製の大聖堂と美しいボードがゲームを引き立てる。
まずラウンドの指針になるカードを順に取る。ここには何人の労働者で何色の資源をいくつ手に入れられるか、あるいはいくらお金を払えば特定の行動をしやすくするかなどが書かれている。
そして行動を選択していくが、ここが面白い仕組み。各色2つずつ建築家コマが入った袋からランダムに1つずつ出し、その色のプレイヤーは行動を選ぶかパスするか決める。行動を選べばお金を払わなければならないが、パスをすれば後から置くことになる。ボードはいくつかのエリアに分かれており、それぞれのエリアで資源を手に入れたり売買したり、勝利点や特殊能力を得たりもできる。エリアによって定員があったり先に入ったほうが有利だったりするので先に選べば有利だが、最初は払うお金が高い。お金はいつもギリギリ。1人パスするたびに値段が下がっていくので、どの時点で行動を選ぶことにするか的確に判断したい。
全員が行動を選択し終わったらイベントカードをめくり、順番に各エリアを解決していって、最後に大聖堂を建築する。それまでに集めた資源を供出して勝利点を得るところでは、カードに沿ってどれくらい計画的に資源を集めたかが試される。ラウンドが進めば特殊能力のコンボも炸裂して、プレイヤーによって戦術が変わってくるだろう。

スペースディーラー(Space Dealer / T.シュターペルフェルト / エガートシュピーレ)

時間との勝負、冷静に

『古代(Antike)』がドイツゲーム賞で3位に入賞し、一躍メジャーなメーカーとなったエガートシュピーレの新作は時間を気にするゲームだ。
付属のCDをかけ、プレイ時間はきっかり30分。同じくCDをかけながら遊ぶ『スカッドセブン』を彷彿とさせるが、考える時間は十分にあって、パニックゲームではない。CDは5分ごとにアナウンスが入り、音楽が変わる。
各プレイヤーは2つの砂時計を資源の生産ポイントや船に置いて、砂時計が終わるたびにアクションを実行できる。アクションを実行したら砂時計は次のアクションへ。砂時計が落ちるまでにほかのプレイヤーの動向を見ながら次の行動を考えたいが、ほかのプレイヤーの状況も刻一刻と変わっていくので砂時計も含めた観察力が試される。
砂時計を使ったゲームには2人用アブストラクトの『タムスク』があるが、同じようにある程度の習熟が必要になるだろう。基本ルールと、攻撃や交換などでインタラクションを上げた上級ルールが入っている。
最初はほとんど人の動向を見ている余裕がない。たった30分なのに1時間も遊んでいるような高密度のゲームだ。

タラ(Tara / A.ポール / サプライズド・ステア)

一気に王位を奪取

イギリスの4つの地方で王権を争うちょっと変わった陣取りゲーム。王位を取るには農夫から貴族へとコマを配置していかなければならない。
カードを出して、指示されたマスにコマを置く。各エリアはピラミッド上になっており、下の階層で2マス並ぶと、お金を払って上の階層にコマを置くことができる。その階層のとなりにまた自分のコマがあればさらに上の階層に1マス。こうして連鎖を作れば一気に王位を奪取することも夢ではない。4つのうち2つの国で王位を取った人が勝利。
カードを使いきるたびに決算が起こり、階層ごとに最多ならばお金が入ったり、各エリアで2位の人が逆転の一手を打てたりする。勢力はめまぐるしく塗り代わり、一手の後れが致命的になることも。争いのない新しいエリアを開拓する手もあるが、すぐに後発の勢力がやってくるから油断ならない。ダイナミックなゲーム。

サンティ・アンノ(Santy Anno / A.オーバン / レポスプロダクション)

どの船が正解?

海賊たちがすばやい判断力で船から船へと乗り移るゲーム。各プレイヤーは最初の船を決めてスタート。船は見張り台、マスト、船体、ネームプレートの4種類が4色で塗り分けられており、そのうち1色だけ同じ色の船がほかにある。
テーブルには5枚のカードが並ぶ。船体カードだったら、船体が同じ色の船へ。×マークがついていると、指定された色の人は移動してはいけない。これを順番に頭の中で船から船へと乗り移り、5枚目のカードの後で自分がいる位置に、すばやく駆け込む(机の周りを走って!)。正解者の早い順に点数が割り振られる仕組みだ。
家が狭いなどで走り回れないときは、自分のタイルを目的の船に置く遊び方もできる。スピーディでエキサイティングなパターン認識ゲームだ。

ミスタージャック(Mr.Jack / B.カタラ、L.モーブラン / ウリカン)

切り裂きジャックは誰だ?

近年活躍中のフランス人デザイナーがフランスの会社で発表した2人用推理ゲーム。プレイヤーは切り裂きジャックと探偵になり、夜の街で追いかけっこをする。
ボード上にちらばった8人のキャラクター。このうち1人が切り裂きジャックだが、それが誰か探偵は知らない。全プレイヤーを移動して1ラウンド終わるたびに、探偵は切り裂きジャックが目撃されたか(電灯か他の人の隣にいる)かどうかを訊く。こうして犯人を絞り込んでいき、これだと思ったらほかのコマで捕まえよう。当たっていれば探偵の勝ち。
一方、切り裂きジャックはキャラクターを散らばらせて推理を難しくし、最後まで逃げ切るか、ゲーム中に警官が封鎖していない道から脱出すれば勝ち。
2人が交互にキャラクターを動かしていく中での駆け引きが面白い。各キャラクターには電灯や警官を移動したり、マンホールを封鎖したりするなどさまざまな能力があって思わぬ効果が楽しく、またラウンドが進むにつれて電灯が消えていき推理しにくくなるなどバランスもよく取れている。迂闊な行動をするとゲームがすぐ終わってしまうので慣れが必要かも。

ヘマゴール(Hemagor / E.オルネッラ / マインド・ザ・ムーヴ)

商売&陣取りゲーム

『ファンタジーパブ』『オルトレマーレ』『君主論』と全てのゲームがメジャー化されたイタリアのメーカーには安定感がある。この新作でプレイヤーは商人となって品物を仕入れ、街を行商して販売し、トレーディングポストを建ててエリアを手中に収め、大金をものにすることを目指す。最後は手持ちのお金で勝負。
品物の仕入れは陣取りで行う。タイルの上や脇にお金を払って商人コマを置き、各タイルごとに最も影響力のある人が入手する。4つのタイルに影響力を及ぼす位置に置くのは高いが、実入りも大きいだろう。
こうしてタイルを手に入れたら街へ繰り出そう。道を通るたびにお金を払い、行き先で指定された品物を売って収入を得る。商品の価値を上げて高収入を狙いたい。
売りたびにトレーディングポストが建てられ、これによってエリアを囲んだら大きな収入が入る。先にポストを建っている街ではその人にお金を払わなければいけないからのんびりはしていられない。ゲーム終了時には中央の王様の道路と、川で分けられた3つのエリアについてボーナスもある。
2つの陣取りに損得のマネージメントを加え、高いオリジナリティをもつことに成功した作品。プレイ時間はやや長めで90分ほど。

アンダーグラウンド(On the Underground / S.バースダル / JKLMゲームズ)

最短の乗り換えルートで

ロンドン地下鉄を舞台に、路線を作って効率よく客を輸送するゲーム。『チケットトゥライド』のように自分の色の線路を引いて路線を作るが、目的は客がいるところからカードで指示された目的地まで最短で結ぶことにある。路線ができていなければ客はそこを歩くことになり、だいぶロスしてしまう。
中央の幹線は客が頻繁に使う路線だが、周辺にいくほど利用者は減る。そこでは単発路線ではなく、エリア一帯を自分の路線にして独占状態にするのが利益を上げるコツになるだろう。
地名が分かりづらいけれども、路線引きゲームが好きな人に。

シュヴァーベンの百万人(Millionen von Schwaben / U.ホシュテトラー / ファタ・モルガーナ)

八百長しまくりのサッカーゲーム

ワールドカップも冷めやらないドイツではいくつものサッカーゲームが発売されていたが、その中でも笑いの取れる一品。
各プレイヤーはたくさんの参加国から2カ国を担当する。4人だったら8カ国が参加するワールドカップで、予選を勝ち抜くのはどの国か、決勝に進出するのはどの国か、優勝国はどこかをそれぞれ自由に予想する。国によって攻撃カード、守備カード、特殊カードの枚数が定められており、内容を見て勝てそうか考えよう。強豪国は賭け金も高い。
予想が終わったら試合開始。A組とB組、各4カ国で予選を行い上位2カ国が決勝トーナメントに出場するという、ワールドカップさながらのシステム。
試合は交互にカードを出してダイス目を足し、ゴール判定を行うもので、次の試合に備えてカードを温存したければいつでもやめることができる。でも自分が担当する国同士が当たることもあり、八百長し放題なのがおかしい。さらに試合に参加していないプレイヤーが審判をするので、自分の予想に沿った判定も可能だ。
カードの割合によって各国の性格が出ており、またカードのテキストが織り成すドラマもあってサッカー好きなら会話が弾むだろう。

タルヴァ(Taluva / M-A.カサソラ / ハンス・イム・グリュック)

オーソドックスでガチな陣取り

アッティカ以来となるカサソラとハンス社の新作である。ヘックスが3つつながった地形タイルを置き、条件によって自分の家・寺院・塔のいずれかを建設する。ヘックスは横につなげるだけでなく上に置くこともでき、『ジャワ』のように立体的な地形が生まれる。
まずは家を建てていき、条件が揃ったところで寺院、さらに塔とグレードアップする成長系。最後の勝敗はより建築が難しい建物の数で決める。
プレイ時間は45分とされているが、的確な場所を見つけ出す能力が問われるので、ガチな戦いになりそう。

陰謀と殴打(Kabale und Hiebe / L.シュテッポナート / ハンス・イム・グリュック)

クニツィアライクな数比べゲーム

各プレイヤー同じデッキから手札を取り、5つの列の好きなところにカードを置いていく。各列とも最新のカードは裏向きに置かれ、次のカードが出たときにオープン。このときカードの特殊効果が発動し次のカードが吹き飛ばされたりするなどいろいろなことが起きる。列がいっぱいになったときにカードの合計が最多のプレイヤーが得点していく……という特殊効果つきの『フリンケピンケ』のようなゲーム。
そういえばアミーゴの新作『遺跡探検』もカード配置、数比べのシステムを使っていた。このシステムを基本にして、特殊効果がどう炸裂するのかが見どころだろう。

よくある女、よくある男(Typischer Frau, Typische Mann / R.クニツィア / コスモス)

クニツィアの(!)コミュニケーションゲーム

作者を見たとき、一瞬目を疑ってしまった。合コンで遊びそうなこのコミュニケーションゲームがR.クニツィア作なのである。
まず親が男だったら男のお題カード、女だったら女のお題カードを読む。「私が人を好きになるとき…1.その人に好きな人がいてもいい 2.その人を好きな人がいてもいい 2.お金持ちでなくてもいい 3.顔はどうでもいい」そして自分の答えをできるだけ正直に1つ選び、へんてこりんな塔の中に入れる。
ほかの人は親の性格を読んでどの答えにしたか予想し、同じく答えを塔の中へ。全員が入れたら答え合わせで、当てた人と当ててもらった人に得点が入る。
そんなコミュニケーションゲームだが、特徴は正解のたびにプレイヤー固有のチップをもらい、誰とフィーリングが合っているか相性チェックができるという点。そりゃ楽しいだろうねぇ……テキストがドイツ語なのが最大のネック。

悪魔城への馬車行(Kutschfahrt zur Teufelsburg / M.パルム、L.ツァッハ / アドルング)

とりあえず殴って敵味方を確認

アドルング社の最注目作は最高で10人までできる多人数ゲーム。テキストが多いが英語で書かれているのでまず遊べるだろう。
プレイヤーは10人のキャラクターと紋章を取る。紋章は2種類あり、どれが誰か分からない。いちはやく自分と同じ紋章をもっているプレイヤーを探し出すことが目標だ。『バン!』や『シャドウハンターズ』のような正体隠蔽ゲームである。
各プレイヤーには特殊能力がある。これらを駆使してアイテムを使い、誰かを殴ってみよう。そのとき全員が攻撃か防御かを選び、戦いに参加する。誰が誰の正体を知っていて、どちらの味方についたかをよく観察すれば、自ずと敵味方の見分けがついてくるはずだ。もちろんゲーム中の会話の内容も見逃せない。
アイテムを自分の陣営で確保するか、味方を全部当てられたら勝ち。アイテム収集で劣勢になっていてもまだ勝つチャンスは残っている。
アドルングらしく、カードゲームとは思えないほどの濃厚な時間を過ごせるお得な一品。

スポーツは殺人だ(Sport ist Mord / H.ペール / スフィンクス)

エログロナンセンス

かなりイかれたゲームを作り続けるスフィンクスの新作は、スポーツしすぎへの警鐘を鳴らす、運動不足のゲーマーを擁護するようなゲーム。
ダイスを振って8つのスポーツ―スノーボード、ボーリング、バスケットボール、サイクリング、ゴルフ、サッカー、テニス、ビリヤードのトレーニングをしていく。ダイスがたまるとカード分配へ。カードが多いほど得点が高いが、中には怪我や死亡のカードが入っており、下手をするとゲームから抜けなければならなくなる。ひどいカードは他人に押し付けて、ほどほどに運動しよう。
ほんわかしているが実はかなりぐろい死亡事故カード(右)が笑える。基本はダイスゲームだが、カードの押し付けなど戦略的な要素もあるようだ。

トゥルブレント(Turbulento / H.マイスター / セレクタ)

アクション+記憶ゲーム

セレクタの新作はH.マイスターが手がけたアクションゲームだ。円形のお皿に上からボールを落としてひっくり返す。失敗するとボールを取られてしまう。めくったカードに描かれた動物が目標だが、その動物がもうひっくり返っていたら今度は記憶ゲームになる。どれだったかな……?。当てることができたらボールをもらえる。ヤギと羊など紛らわしい動物もいて覚えておくのは容易でない。
ボールを落とすときに力を入れすぎるともう一回転して元に戻ってしまう。手加減がなかなか難しい。大人と子どもで十分張り合えるだろう。エッセンで発表された子どもゲームの白眉。

アナサジ(Anazazi / K-J.ヴレーデ / ファランクス)

便乗して奥地に進む

『メソポタミア』で高い評価を得たヴレーデ&ファランクス社の新作。バラバラに配置された遺跡タイルにはしごを渡して探検し、宝を集める。
手番には2本のはしごをかけられるが、いくつかのスタート地点のどこから始めてもよい。また、一度かけられた橋は誰のものでもないから、その先に便乗することもできる。宝のあるマスに橋が到達したら宝をゲット。ゲーム開始時、各プレイヤーに2倍になる宝の色が指定されているので特にその色の宝を集めよう。
遺跡には宝のほかに塔もある。塔の下には色がついており、この塔を取るとその色の宝の価値が下がってしまう。その島にはしごをかけると塔をこっそり見ることができるので、取るべきかどうか考えよう。また途中にキャンプを置くと自分専用のルートになり、ほかの人の進路を妨害できる。いずれかの色の塔が全部取られるか、はしごがなくなったら終了。
はしごが届いたとか届かないとか、アナログ感たっぷりのゲームだ。

ハーメルン(Hameln / ラモント兄弟 / フラゴール)

ネズミを追い払って、子どもも……

一昨年の『リープフロッグ』、昨年の『ヒツジパニック』と高い評価を得ているスコットランドのメーカーは有名な『ハーメルンの笛吹き』をモチーフにしたボードゲームでドイツに乗り込んできた。
家を作り、子どもを育て、子どもがやがて結婚して新しい家を作って広がっていく。だが家にはネズミがどんどん増えていく。子ネズミから大ネズミへ。ネコやハーメルンの笛吹きで追い払おう。
しかしハーメルンの笛吹きがやってくると、まだ結婚していない子どもたちは遠くの街へ連れて行かれてしまう。マイナスポイント。
影響力を上げて手番の順位を先取りし、有利にゲームを進めるシステムなど作りこまれた作品だ。

モンスター画家(Monstermaler / F.フリーゼ, M-A.カサソラ, A.マイヤー / ?)

これほどに考えの違いが?

ドイツゲームの人気若手デザイナーたちが発表したお絵かきのコミュニケーションゲーム。メモパッドになっていて、はがして使う。
全員1枚ずつ紙をもつ。半分に折り、「ナポレオン・ボナパルト」とか「死神」とか「ダースベーダー」とか「エルビス・プレスリー」などのキャラクターを1人決めて、左半分を描く。描き終わったら左半分を裏にして隣りの人に渡し、隣りの人は名前を見て右半分を描く。
こうしてできあがった2人の「共同作品」を1枚ずつ広げてオープン。残りの人に当ててもらう。正解者がいればポイント。
同じキャラクターでも、もっているイメージがまるで違うとおかしい作品ができあがる。そのちぐはぐな絵を見て笑うゲームである。

ユルヘンとモンスター(Julchen und die Monster / M-A.カサソラ / カサソラ)

助けるか、さもなければ食べる

カサソラが独自出版したカードゲーム。シートを切り抜いて作る。
ユルヘンという女の子をモンスターの魔の手から救い出すのが目的。2枚の手札から始めて、山札からカードを引き、数字の大きい順に並べる。他の人の手札から1枚抜いて奪うことも可能。カードの中にユルヘンがおり、手札の並びから推理して奪い取りたい。
手札にカードがたまったら、ペアになったカードを捨ててユルヘンを食べるチャレンジができる。一発でユルヘンを引き当てれば勝利。また終盤はカード枚数を減らすことによって勝つこともできるが、減らせばそれだけユルヘンが目立ちやすくなるので難しいところだ。反対に言えばカードをがっぽり溜め込んでいる人はユルヘンがいるということになるだろう。
味わいのあるイラストも雰囲気を出している。

冒険者の谷(Tal der Abenteuer / R.クニツィア / ハズブロー)

クニツィア・ジレンマを全ての人に

オーストリアゲーム大賞を受賞したクニツィアのボードゲーム。カードを出してコマを進めるすごろくだが、誰がどの色のコマを担当しているというのではなくて、対応する色のカードを出せばどのコマでも進めることができる。
一着が出た時点で、手持ちのカードを公開し、一着の色のカードは1枚3金、二着以下はその時点のコマの位置によって収入または(あまりに進んでいないと)罰金。カードを出せばコマが進むがその色のカードは少なくなる、かといって温存しようとすればコマが進まない……というクニツィアジレンマが活きている。
さらに途中には収入やダイヤモンド、カードの補充ができるマスがあり、ここで少しずつ力を蓄えていくことも必要だ。さらに、ボードは両面になっていて、第一レースが終わったら一旦清算して裏のボードに進む。いずれかのコマが最果てのチベット寺院に着いたとき、一番ダイヤを持っている人にはボーナスも入る。
面倒くさいルールがないので子どもからお年寄りまで楽しめ、手軽にクニツィアのジレンマを味わってもらえる作品だろう。

それってどこよウプサラ(Ausgerechnete Uppsala / B.ラッフ、U.ラップ / フッフ・フレンズ)

それでも分かんない

今年のフェアプレイのカードゲーム賞を受賞した『ブクステフーデ、それどこよ』のヨーロッパ版。地名カードを、実際の地理に従って東西南北に並べていく。
ウソだと思ったらダウトを宣言してカードを裏返すと、緯度と経度が書いてあって確かめることができる。合っていたほうがチップを獲得。また何枚かに1度、中間決算が起こり何枚が間違って置かれているかを予想。予想が当たっていればまたチップをもらえる。ちなみにウプサラは北欧の都市。
ヨーロッパ版ではパルテノンやストーンヘンジなどの観光地カードも混ぜて遊ぶことができ、地理の勉強になる。しかし日本人にとって厳しいゲームであることには変わりない。「ウプサラ大会があるんですが、参加しますか?」「いえ、無理です……」

【フェアプレイ誌による人気投票結果・獲得票数70票以上】
1位:『イスファハン(Ysphahan/イスタリ)』 1.77pt./187票
2位:『大聖堂(Die Säulen der Erde/コスモス)』 1.77pt./177票
3位:『レオナルド・ダヴィンチ(Maestro Leonardo/ダヴィンチゲームズ)』 1.81pt./236票
4位:『タラ(Tara/サプライズド・ステア・ゲームズ)』 1.92pt./74票
5位:『サンティ・アンノ(Santy Anno/レコス)』 1.98pt./85票
6位:『スペースディーラー(Space Dealer/エガートシュピーレ)』 1.99pt./174票
7位:『ミスタージャック(Mr.Jack/ウリカン)』 2.04pt./101票
8位:『ヘマゴール(Hemagor/マインド・ザ・ムーブ)』 2.09pt./98票
9位:『アンダーグランド(On the Underground/JKLM)』 2.10pt./78票
10位:『ヒツジパニック(Haste Bock/ツォッホ)』 2.18pt./103票
11位:『ウル(Ur/ホワッツ・ユア・ゲームズ)』 2.19pt./77票
12位:『タルヴァ(Taluva/ハンス・イム・グリュック)』 2.33pt./156票
13位:『クロノス(Khronos/マタゴール)』 2.47pt./77票
14位:『アルカディアの建築士(Die Baumeister von Arkadia/ラベンスバーガー)』 2.48pt./126票
(太字がこのページ、その他はエッセン新作情報にリンクしています)